最低クソ弱貴族の後継者〜レベル1の二代目領主は知識チートで皇帝へと成り上がる〜

@サブまる

第1話 レベル1の貴族、領主となる

「カール様、ご気分はいかがですか?」


 支度を済ませ、部屋を出ると、すぐそこに貴婦人が立っていた。


「ささ! 剣の修行に参りますよ!」

「今日もやるのか」

「もちろんですよ!」


 侍女セーリャ。俺、ことカルロス家の五男、カール・カルロスの世話役を担当している。


 溢れんばかりの笑顔の彼女とは対照的に、俺は気が重かった。


 理由はいろいろある。


「よう! カール!」


 来やがった。


「おはようございます。父上」


 現領主、俺の父でありここら一帯を収めるカルロス家の家長、フルネス・カルロスだ。


 容姿は並。面倒だという理由から、髭を伸ばしっぱなしにしているこの男。

 頭を下げる俺を見るなり、大いに笑い飛ばし、


「相変わらずみすぼらしい格好で、さすが俺の息子だな!!」


 と言いやがった。

 白い麻布を適当に縫い込んだような上下一体型の服。

 このクソダサい服を、誰がすき好んで着るのだろうか。


 お前がこれを指定したんじゃろがい。

 そう、喉まででかかったが、


「お目汚し申し訳ございません。」


 俺の気が重い理由の一つ目がこれだ。毎朝この男は飽きもせず俺を罵りにくるのである。そして二つ目が、


「なんだ? 剣の練習か?」


 男が口に手を当て半笑いでそういう。一発頬をぶん殴ってやりたいが、小さく首を縦に振ると、


「ガハハハ!! 全くお前は知性のかけらもないやつだな! レベルが上がらんというのに!!」


 はい。言いやがったなこのクソ親父。

 俺が一番気にしていること、それは俺のレベルが1から一向に上がらないということだ。

 今は十と二の年だが、この歳になれば一般の子供の平均はレベル10。俺の兄弟は俺の歳には既に15を超えていたという。


 つまりまあ、圧倒的に遅れをとっているのだ。


「……精進いたします。お仕事頑張ってください」


 また一つ笑い飛ばした後、クソ親父はさっさと歩いて行った。

 その後、なんとも言えぬ空気のまま訓練場へと向かった。


「セーリャ、俺は成人したらこの家を出るぞ。絶対だ。」


 どれだけ素振りしようがレベルは上がらないと知りながら、俺は剣を振り、それを期待の眼差しで見守る侍女にそういう。


「!? 継承戦には参加なされないのですか?!」

「当たり前だ、あんなもん。俺は家を出て、旅にでる」

「ですが、それではカール様のメンツが……」

「いいか? そんなものはクソの役にもたたん。何より見ただろうさっきの」


 俺にもはやメンツなどかけらもない。

 それに、五男である俺に継承権など回ってくるはずもない。

 だったら初めから辛い上に、めちゃくちゃ手間のかかる継承戦なんぞに関わらず、家に出る準備をしていたほうがいい。



 それから、毎日バカにされること、二年が経った。


「カール様!!!!」


 いつもは部屋の外で待機しているはずのセーリャが、扉を開けて入ってきた。

 寝ぼけ眼で体を起こすと、なにやら見覚えのある服を片手にベットに手をつくセーリャが目に入った。


「か、カール様が……次期領主に決定しました!!」

「はあ? 俺は五男だ。そんなアホな話があるわけないだろう。第一、まだ父上は継承戦を認めてないだろ」

「いいので! 早くこれに着替えてください!!」


 されるがままに服を着せかせられ、領主の間と呼ばれる父上が領民との面会の際に使用する部屋に連れていていかれた。


 中に入れば、既に大勢の家臣らが控えていて、なぜか俺は父上が座るはずの玉座に案内された。


 初めて入ったが……なんだこの空気? 全員が俺の前にかしずいている。


「まるで領主様じゃないか」

「ふふふ、カール様、今日からあなたがカルロス家の家長、そして、カルロス領の領主なのですよ!!」

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