漢字に弱い彼氏
「紗奈〜」
仕事中、パソコンと睨めっこしている彼氏の近くで作業していると、突然彼に呼ばれた。
「なにー?」
どうしたのだろう。何か変更点でもあっただろうか。そんな事を考えながら近付けば、全く予想とは違った返答が来た。
「これ、なんて読むの?」
えっ、なんだそんな事か。
パソコンに表示された文字を指して、こちらを見上げる彼。彼は結構漢字に弱く、普段から漢字の読みを聞かれることがある為、また今度は何が読めないんだ?なんて考えながらパソコンを覗き込むと、そこには『遷移』と書かれている。
…確かに、これはわかんないわ。
正直私も見たことがない熟語で、自信は無かった。しかし、折角私を頼ってきてくれているのだからと、何となくで読んでみる。
「え、これ?んー…『せんい』かな?」
合ってるのか調べようと、スマホを取り出そうとすると、隣で「『せんい』か!!ありがと!」とまたカタカタとパソコンのキーボードを叩く音が聞こえてきたので、慌ててスマホで調べる。全く、私のことを信頼し過ぎでは?私もそんなに頭が良い訳では無いのだからちょっとは疑って貰わないと困るよ!
でもまあ『せんい』と打って変換ですぐに出てきたのでどうやら当たっていたらしい。
私が間違えているという可能性を全く考えていないから、もしこれで間違っていたら恥ずかしいし、なんだか申し訳ないじゃないか。
良かった〜と思い彼の方を見ると、同じくパソコンの方で変換していたらしく、「出てきた!すご!」と感嘆の声を上げていた。
「これで『せんい』って読むんだね〜。俺、ずっと『かんい』だと思ってたんだけど、全然変換で出てこなくてさ〜」
さっきからずっとパソコンの前で何だか難しい顔をしているなあと思っていたら、これで悩んでいたのか。普段はしっかりしてて英語とか数学は私よりも出来るのに、漢字になると中学生並の学力になってしまう彼。
漢字だけが唯一、私が彼に頼ってもらえる所なのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます