年下彼氏との日常
神崎 紗奈
もし別れようって言われたらの話
「紗奈って、別れようって言われたらあっさり別れそうだよね」
買い物に行く途中、今日は珍しく助手席に乗っている彼が、唐突にそんな事を言ってきた。
「え、なに急に」
「いや、なんかふとそう思って」
彼氏がこういう話をするのは珍しい。ましてや、いつも助手席に乗っていると、ボーッと1人の世界に行ってしまうくせに、今日はどうしたのだろうか。
「で?実際どうなの?」
答えを催促してくる彼に私は正直に答えた。
「まあ、あんまり引き止めはしないかもね」
すると、「やっぱりね」と返ってくる。
「でも、とりあえず理由は聞くよ?それで納得すれば別れる」
「えー、話し合いとかしないの?じゃあもしその理由が、最近素っ気なくて嫌われたと思ったとかだったら?」
「いや、理由を聞いた時に話し合うよ?」
そう言うと、あまり納得していなさそうに「ふーん」と言われた。
何、今日私別れ話でもされる?何か試されてる?
なんて疑問が頭に浮かぶが、彼氏の様子を見るにただ純粋に気になっただけのようだった。
逆に彼氏は別れようと言われたらどうするのだろう?ふと気になってみたので聞いてみる事にした。
「逆に
すると、まさか自分にその質問が返ってくると思って無かったのか、キョトンとした顔で「え?」と言う彼。想像が付かないのか、しばらく待ってみても答えが返って来ないのでもう一度、今度は想像しやすいように「もし私に別れようって言われたら?」と聞いてみたら、彼は少し悩んでこう言った。
「うーん。…そしたらボコボコにするね」
…ん?
あまりにも真面目な顔でそんな事を言うから、一瞬冗談なのか本気なのか分からなかったが、恐らく半々なのだろう。半分本気というと、彼氏が束縛強いDV男のように聞こえてしまうが、内心はそうしたいくらい荒れているというだけで、実際に彼が手を出す事は無い。…多分。
しかし、冷静になって考えてみると、別れようと言われてボコボコにするというのはなんだか凄く可笑しく思えて笑ってしまった。
考えれば考える程可笑しくなってきて、隣で大笑いしていると、そんな私が可笑しいようで彼氏も私を見て笑いだした。
「自分がボコボコにされるかもしれないのにそんな笑うの可笑しすぎでしょ笑」
「いや、だって、別れようって言われてボコボコにするって、可笑しいじゃん笑」
「どこが笑」
「だって別れようって言われただけでボコボコにするんだよ?笑
理由も聞かないででしょ?笑」
「ふふっ、そうだよ笑 理由聞かないでボコボコにする笑 もう別れようって言われた瞬間にボコボコにするから笑」
まず、ボコボコにするっていう表現が可笑しいんだよな〜。
考えれば考えるだけ面白くなって、2人で暫く笑った。
きっとこんな可笑しな答えをするのも彼だけだろうし、これだけでこんなに笑えるのも私だけだろう。
これは、ちょっと変わった彼氏と、その彼女の話。
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