号哭

言葉を書き並べた

自分を変えるために

書ける言葉を知るために

言って欲しかった言葉を探すために


傑作は今日も電子の海に消えていった

僕のこんな言葉も誰も見ない

それだけ拙くてどうしようも無い言葉を

さも天才のような顔をして並べていた


そんなわけないのにな

今日も雑踏が僕を避けていく

何者でもない僕は誰とも話さず

窓の外から楽しそうな喧騒を流れ聞いていた


「寂しい」とも思わなくなった

「羨ましい」とは思っても、それまでになった

もう心が死んでしまったかのように

恨み辛みだけが支配する世界で独り戦っている


それでもどこかで「幸せ」ってのを探してる

憧れているそいつを僕は今日も書いた

誰にも好かれない、読まれない寂しい物語を

死んだ目をして書いてるんだ


苦しいよそりゃあ

目の前で消えていったそいつの面影を探して

薄れていくその姿を必死になって描いてる

理不尽な世界に咲く綺麗なその花を


結局誰も僕の作品なんか望んちゃいない

昔からそういうことばかり言ってきた

それを「そんな事言うんじゃない」って言うけど

それを我慢してまで書いた作品は駄作だった


何も無い

友達だって、いつも話す友達だっていない

だけど不思議だよな

あの頃と違って辞めてえとは思わないんだ


もう誰も僕の作品なんか誰も読まない

少なくとも昔のファンは皆離れていった

けどそれでも書いてるんだよ

おかしいよな


悪くいうなら好きに言えよ

「お前の作品なんかもう好きじゃねえわ」って

言うなら言ってみろよ

僕はもうそんな君の好きな作品は書けない


それでも

そういう作品を好きだって言う奴がいるんだ

なんでだよ、って思う

けど間違いなくそういう奴はいるんだよ


笑っちまうよ

でも昔はそういう人間がいたってやめてたんだ

それがどんなに大切な人だったとしても

不貞腐れて全部辞めてたんだ


そういう自分が嫌いだった

今でも自分は嫌いさ

でも昔よりは嫌いじゃない

少なくとも作品書いてる自分は好きになったよ


どうしようもねえ人間だから書ける物語書いて

誰かに「良かった」って言って貰えるために

人の数倍悩んで書いた作品が好きだから

ここまで悩んで書いてる作家は僕だけだよきっと


だからその自負が消えないうちは書き続けるよ

もう人の好き嫌いなんかどうでもいいよ

自分の好き嫌いだってどうでもいいよ

けどそんな物好きな奴らの為に書き続けるよ


いつか消えゆく運命なら

今在るうちは楽しまなきゃな

どうせこれからも苦しむんだろうけど

創作と心中できるなら安いもんだ

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