目標を見失う!

台北メトロ淡水信義線の圓山駅から、中山、台北を通り過ぎ、東門駅で夫は降りた。


小籠包で有名なディンタイフォンの横道を入り、またさらに脇道を入ると、小さな居酒屋があった。


夫は午後5時半過ぎにその店に入った。


その5分後に我々もその店に入った。


店内は丸いテーブルがいくつかあり、夫は店の奥の方のテーブルに一人で座っていた。


「台湾ビール」というラベルの付いた瓶ビールを飲んでいた。


我々はというとコーラを頼み、適当に豚肉の炒め物のようなものをを頼んだ。


6時を過ぎた頃、30代前半くらいの女性が店に入ってきた。


色白で細身の女性は髪は長く、美しかった。


女性は夫のテーブルの椅子に座ると、二人は日本語で話し始めた。


女性は日本人のようだ。


何品か食べ物を頼み、しばらく二人は食事をしていたが、どうも様子がおかしい。


話の内容までは聞き取れなかったが、その雰囲気から喧嘩をしているようだった。


しばらくすると、女性の方から先に店を出て行った。


夫はさらにビールを頼み、一人酒を煽っていた。


田中は女性を尾行する為に店を出て行った。


夫はその後1時間ほど経つと、店を出た。


電車に乗り、そのまま圓山駅に帰ると思ったが、途中中山で降りた。


地上に出ると、土曜日の夜だからなのか、ものすごい人手だ。


タピオカミルクティーを飲んでいる、二人組の10代後半くらいの女の子の一人が私とぶつかり、ミルクティーを落としてしまった。


私は私は慌てて財布から100元札を出し、謝りながら女の子に渡すと、すぐに夫を目で追ったが、既に見失っていた。


やってしまった。


しかし、今日はもう先程の女性に会うことはないだろう。


別の女性に会うのか?


とりあえず田中に連絡しなくては。


私は携帯で田中に連絡した。


田中はカフェに入った女性を追い、少し離れたテーブルで待機中とのことであった。


私は道に停めたままの、スカイラインに戻ると伝え、中山をあとにした。


午後9時前であった。

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