夢の中の少女と暮らすための世界征服
@sibuta1182
第1話 能力の発現
薄暗く広いホール
数十名の若者が集められたそこでは15歳になった男女への能力の数値化と生まれついた特殊な能力を発現させる儀式が行われている
「次の者 前へ」
壇上で指示を出す黒いローブを纏った白髪の老人
その指示に従い一人一人壇上へ上がる
そこでは一冊の本が手渡される
何も描かれていない表紙の上に若者が手を置くと数秒の後 僅かに本が白く発光する
「よし 下がりなさい
次の者 前へ」
これを人数分繰り返すのだ
そして最後の若者が本を受け取り儀式が終わると老人はホール全体に響き渡るほどの声量で言葉を発する
「これで成人の儀が終わった
この日からみな大人になったのだ
これからは各々の能力をこの国の発展のため使うよう務めよ」
その号令にも似た発声に若者は神妙な面持ちで敬礼をする
そして老人はゆっくりとその場を後にした
その扉が閉まった瞬間 今までの静寂が嘘のように若者達の声が上がった
「やーっとおわったーー!」
「お前能力なんだった?」
「お前能筋すぎだろ!」
笑い声や驚き 悲嘆の声が一斉に交わされホール中に響く
そんな中一人の若者が本も開かず出口へ歩みを進めていた
「あー!居た!スイちゃん待ってよ!」
そこへ一人の少女が駆けつける
「まだ本の中身見てないの?」
少女の問いかけに応えることもせず、スイと呼ばれた少年は出口の扉に手を掛けた
「ねぇスイちゃんってば!」
「はぁっ うるさいな
僕は家に帰ってゆっくり見たいんだよ」
スイが後ろを振り返ると少女の姿はなく 代わりに大柄の男が立っていた
「スイ 帰るのか?」
見上げるとその男の肩の上に少女がお座りしていた
「スイちゃん~こわいよぉ」
「はぁっ」
スイは片手を額にあてて溜め息をついた
「カイ ハナを下ろしてやれ」
カイはゆっくりとハナを下ろしながら会話を続けた
「メシ 食いにいこう」
「だから 僕は家で、、、」
「あ!いいね!わたしもカイちゃんにさんせー!」
ハナはスイの言葉を遮ってカイの隣でピョンピョン跳び跳ねている
「酒 飲んでみたい」
「あっ そうか もうお酒飲めるのか
それは確かに興味あるかも」
少し前向きになったスイの反応を見てハナは
「よーし!行くぞー!」
と2人の手を引っ張って外へ出た
「でも お金持ってないぞ僕」
「あっ わたしも」
ハナは足を止めカイの方を見上げた
カイはズボンのポケットから銅のコインを手にとってみせた
「銅銭二枚ある」
「お酒ってそんなんで飲めるものなのか?」
三人で微妙な顔をつき合わせていると、背後から甲高い笑い声が聞こえてきた
「ハァーッハッハ!貧乏人風情がたむろして何を相談している?」
振り返ると 綺麗な身なりをした貴族のボンボンが取り巻きを連れて歩いていた
「シャルル様 どうやらアイツら銅銭二枚でお酒を飲みたいらしいですよ」
「銅銭?それは金なのか?金銭以外見たことないからわからんなぁハッハッハ」
下品に高笑いをしながらシャルルは金銭をスイの足元へ放り投げた
「拾え」
「シャルル様 あのようなものに施しですか?勿体ない」
シャルルは三人を見下しながらにやついている
「いいんだ 今日はみなの成人の日だお祝いだよ」
スイは足元の金銭を拾いながらお礼を言った
「ありがとうござい、、、」
しかし しゃがんだ瞬間シャルルに蹴飛ばされ 言葉をきらせてしまった
「なっ」
カイがあまりの非道に非難の目を向けるがシャルルは意を解さず手からこぼれ落ちたスイの本を手に取った
「能力は平均以下 発現能力はサーチ?ハハックズだなこりゃ 金銭の価値も無かったか」
本をスイの頭めがけて放り投げ シャルル一行は去っていった
「大丈夫か スイ」
カイがスイに駆け寄る
「僕は大丈夫だ それよりハナを落ち着けてやってくれ」
カイがハナの方を見ると
ハナはうずくまり震えていた
「ハナ もう大丈夫だ」
カイがハナの肩を上げてやると ハナの顔には恐怖ではなく怒気が満ちていた
唇からは血が滲んでいる
スイは立ち上がり服についた砂を落とし、ハナの頭を撫でた
「僕は大丈夫 良く我慢した」
すると ハナははっと我に返りスイに抱きついた
「アイツらこの辺りを治めている領主の息子と取り巻きだ 俺たち農民から絞るだけ絞ってくから酷く嫌われてる」
カイの話を聞きながらスイは大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた
「まっ 何にせよ お酒飲むお金が手に入ったわけだ 気を取り直して酒場へ行こう」
ハナは手で涙を拭うと 笑顔で頷いた
「そうだね 行こう!」
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