第7話 寝不足の1日
昨夜は遅くまでエライサ式について調べていたため、かなり寝不足気味だった。駄目だと思いつつも授業中、とうとうウツラウツラと居眠りをしてしまった。
ポンッ
完全に机に顔を沈めて寝ていると、何かに叩かれて起こされる。
やっべ。完全に熟睡していたかも……。
慌てて体を起こすと、呆れたようにこちらを見る数学の教師がポンポンと丸めた教科書で左の手のひらを叩いていた。周りのクラスメイト達もクスクスと笑っている。
「すっすいません」
「まだ入学して一週間も絶たずに居眠りを始めるとは……もうついて行けないのか?」
「いえ、すいません。昨日の夜ちょっと寝れなくて」
「ふん……ゲームとかか? 若い頃は多少寝なくても無理は出来るが、成長期だからなちゃんと寝ないと育たないぞ」
「はい……すいません」
教師は、言うだけ言って満足したのか再び前に戻り授業を再開させる。
「それにしても酷い顔だなあ、ちゃんと寝てるのか?」
「ああ、大丈夫。授業で寝たから」
「うわ。入学早々脱落予備軍かよ」
昼休みに俺の顔を見てPJが一応は心配してくれている。PJも昨日の班活見学は不発に終わったようで、班活リストを見ながら弁当を食べていた。
「飛行班は、昨日で募集を締め切ったらしい。あとは入班試験で実力を見せないと入れないみたいだよ」
「おいおい、俺みたいな素人が飛行班なんてガチの所入らねえよ。で、シュウはどうだ? 楽しめそうか?」
「中等院時代の班の先輩が居るからね、それなりに歓迎もしてもらえてるよ」
「そっか、お前はエリートコースまっしぐらだな」
「そんな事は無いよ。班長とかは基本的に召喚師がなるみたいだし」
そう言えばオリエンテーションでもあの真ん中で召喚していたのが仕切ってたもんな。飛行班は召喚師も結構いるのかもしれない。
PJもそろそろ本気で焦りだしていた。俺もPJも気になる班は回っている。
「リュート。やっぱ一度ゴレ班見に行かねえか?」
「え? 俺はいいよ」
「んん~。なんかリュートさ、意識的にゴレ班避けてねえ? なあ? シュウもそう思わねえ?」
「そうだね。なんかゴーレムにトラウマとかあるの?」
俺は少し露骨にゴレ班を避けてしまっていたかもしれない。
「そ、そんな事無いよ。ゴーコンは良くテレビで見てるし、ただ自分が参加の方に回るイメージが無いんだよ」
「なんだ、好きなんじゃねえか。祭りは参加して楽しんだもん勝ちだぜ」
「うん……」
そう、正直ゴーレムは好きなんだ。分かってはいる。だけど……。
なかなか踏ん切りの付かない自分に、俺はどうしていいか解らないでいた。
次の日のホームルーム。先生が名簿を見ながら班活の話をする。
「だいたい皆班は決めたようだな。あと4人か。まあ帰宅部も割と良いもんだぞ。若い頃の運動不足とか最近は深刻だからな。お前らもMボートばっかり使わないでたまには歩いて登院してこいよ」
35名のクラスメイトのうち、殆どが班を決めたということか。いや。当然班に入らない申請書を受理された奴らもいるようだが。大体の生徒は希望の班に入っているんだろうな。
「それからまだ班活の届け出してない4人は今日の放課後職員室に来い。アドバイス的なことしてやるから」
げ。マジか。班に入らないだけで職員室へ呼び出しがあるとか聞いてない。チラッとPJの方を見ると、PJも絶望した顔でこっちを見ていた。
放課後PJと連れ立って職員室に向かう。
ノックをして職員室に入ると、既に先客のクラスメイトが先生と話をしていた。先生はこっちを見ると、「順番に1人づつやるから悪いけど外で待っててくれ」と追い出される。
俺とPJがボーッと待っているともう1人の女生徒が歩いてくる。
「あ、班決まってないのってあなた達なのね。えーと……」
まあ、まだあまり女子生徒とは話してないからな。名前なんて覚えてないだろう。一週間も経っているから顔は解るんだけど。まだクラスの女子と男子の間には壁が有った。俺の場合は男子もまだ顔と名前が一致していないのが殆どだけど。
「俺はPJ。で、コイツがリュートだ。えっと。チョット待って……うん。たしか……マリサ……ちゃんだったよね?」
「わお。良く私の名前覚えてたね。そう。マリサ。って中に入らないの?」
「なんか1人づつ面談するっぽい。今先に来てるの居てさ、そいつがやってる」
おお、良くこの子の名前出てきたな。確かにちょっとかわいい感じの子だから俺もなんとなく顔は覚えていたが。そう言えばPJは女子の名前は全部覚えたとか言ってたけど。ホントだったのか。
「そっか、じゃあ私が最後ね。うーん。遅くなりそうね」
「どうせならさ、3人でジャンケンして順番決めようぜ」
ったく。女子と絡むためなら何でもするんだな。俺の確認も取らず……。
「え、だって2人とも先に来ていたじゃん。リュート……君だっけ? 良いの?」
「え? ああ、かまわないよ」
そう言うしかないよ。
結局3人でジャンケンして、PJ、マリサ、俺の順番に成った。最後だ。
そうこうしている間に、先に面談していたクラスメイトが出てきた。
「お、終わったか。どうだった?」
ほんとPJは誰にでも平気で話しかける。ある意味うらやましい性格ではあるが。そうなりたいとは思えないな。突然話しかけられたそいつも少し驚いた顔をしていたが、「ああ、まあ」と気のない返事をして帰っていった。
「じゃあ、行ってくる」
PJが職員室に入っていく。マリサと2人きりになるととたんに喋ることが無くなる。
「……先にしてもらってごめんね」
「いや。いいよ」
「……」
「……」
黙ったまま2人は職員室のドアを見つめていた。
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