ゴーコン!
逆霧@ファンタジア文庫よりデビュー
第一章 ゴーレム班
プロローグ
――7年前――
会場全体が拍手の渦に包まれていた。その中で僕は父親の隣で誇らしげな顔で客席を見渡していた。やがて会場が再び落ち着いたのを見計らい、インタビュアーが僕にマイクを差し向けてくる。
「優勝おめでとうございます! 今の気持ちはどうですか?」
人前で話すことが苦手で、ましてやこれだけの観客の前でマイクで話したことなんてない僕は、少し困って隣を見る。隣に立つ父親は優しく微笑んで頷いていた。
「と、とっても嬉しいです!」
何も気の利いた事は言えなかったが、それでも僕は充分だった。いつも忙しくて普段は僕の寝たあとにようやく仕事から帰ってきていたような父親が、今年の夏休みは僕のために沢山時間を取ってくれた。大会の優勝なんかよりずっとずっとそれが嬉しかったからだ。
「史上初の4年生での全国優勝。来年、再来年と連覇を期待しています!」
◇◇◇
ゴーレムコンテスト、略してゴーコン。
初等院、中等院、高等院、大学院の各年代ごとに分けられたゴーコンのうち、初等院の子供を対象とした親子で参加する初等院の部。僕はこの年。ここでの全国優勝を果たした。
殆どが親の実力で決まるような大会だったが、ゴーレム技術がこの国の根幹を支えている現代においては子供の将来のために早くからゴーレムに触れさせようと多くの親子が参加する。その為全国から腕自慢の親子が参加し、優勝は至難と言われていた。
僕の父親が国を代表するゴーレム研究の第一人者であるだけに、きっと父親もかなり本気で挑んだのかもしれない。だけれどもそれでも良かった。
人生最高の夏休みだった。
……
……
だが、そんな俺の幸せな生活も2年後には地に落ちることとなる。
父親の浮気、そして両親の離婚によって。
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