かくして俺と私の異世界生活はスタートした。

 俺と私が、前世で新卒入社したのは食品系のブラック企業だった。配属された営業部門は、パワハラとセクハラの地であらせられ……そして、法曹を志したが論文試験の突破は叶わないままのグルメなカレーライス屋さんのバイト生活で、身体かココロのどちらかが壊れて……俺と私は今ココにいる。

 ちなみに俺の体重が99kgに達してしまったのは、この2年ほど、パンデミックで急に需要が増大し、毎日、国立市近辺を自転車でカレーを宅配する日々だったのに、体重が25キログラム増えたのは、食費を節約する意味もあり3食ほぼ全てがカレー漬けだったからだ。

 グルメなカレーは文化である。そして美味しい。けれども、365日3食カレー漬けは駄目なのかもしれない。


 ✧


 さておき、俺と私のこれからは、女声の自称女神、改め、転生したら女神と崇められつつある女声にかかっている。


《アラセイカにショコラちゃん。まぁ、君たちはこの異世界じゃアタシの下働したばたらになってくれ。理由はシンプルだ。まずアラセイカが推しの美少女リスタはアタシを女神として心酔している。そしてショコラちゃんが尊いタルヴィッカは、リスタの護衛騎士なわけだしな……》


《そして、ここが肝心なところだけれど、な。アタシはリスタとタルヴィッカを守りたい……そして、もちろん2人を通じて、ショコラちゃんを。》

 ……すでに荒勢以下アラセイカ認定済の俺は、守りたいリストに属していないことは気にならない。そう、俺は守る側に回りたい。

 

《前世で毒殺されたアタシは今はちょっとだけ女神扱いされてはいるが、実のところ、この世界の悪意からはアタシは無力だ。だからアラセイカにショコラちゃんに協力をして欲しいんだ》

 俺と私は頷いた。



  ✧

 

  廉神殿長という年配の御方とは、前世は中洲の嬢な女神サブライムが話をつつけくれた。


  廉神殿での俺は、生育系の魔導という、この地の農作物の生産性を向上させるための地味な魔導を究めようとしている。女神サブライムの権威もあってか、俺の待遇はホワイトである。作物の生産性を向上させることの重要性を廉神殿長様が分かっていてくださるがためだ。もちろん、女神サブライムの言により、今の俺は田中太ではなくアラセイカである。でもアラセイカという名を呼ぶ廉神殿の者たちに、アラセイカを嘲る意向は一切ない。今更ながら、俺は転生前の日本の方が病んでいたのだと思う。


 俺が、そんな平穏な日を送るある日、気高き魔導剣士見習いのタルヴィッカが女神の命を受けたとやってきた。私は、リスタリカ様のお側で、俺を見守った。

 

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