俺の彼女は性格が悪い

Totto/相模かずさ

第1話


 長尾春人 26才、職業月刊少年漫画の編集。

 担当している漫画家は二人。デビュー前のネームを見ている子が三人。

身長176センチ体重68キロ、黒髪。

裸眼で両目とも1・5。見た目は真面目そうとよく言われる。

 自己紹介はこれくらいかな。


 仕事場のビル内にある喫茶店の一角。

俺は今、人生最大の岐路に立たされている。

それも親友と思っていた友人のせいで。

いや、今も親友だよ、それは間違いない。

だから余計にこの理不尽な状況に困惑している。


「一目惚れでした付き合ってください」


こんな、二十歳前の小娘に翻弄されるなんて!

しかも、ほんの少しだけ嬉しいと思う自分がいるなんて。


目の前で赤い顔をしながら決死の告白をしてくれたのは、親友の義理の妹、香川真由さん。19才の女子大生。ショートカットの明るい感じの可愛い子。5年後には美人になってそう。


「……気のせいだと思うんです」


 こんな普通の真面目リーマンが、モテるはずないじゃないか。


 それに、俺は知っている。彼女は俺の親友の神戸幸二に惚れていたってことを。

まぁ、あいつが幼い頃からの婚約者で今は嫁さんである有希さん以外に目もくれないということはよく知ってるから、真由さんの恋が成就することは万が一にもなかったんだけど。


 幸二と有希さんが結婚して1年。もう吹っ切れたのかな?

新婚家庭に何度かお呼ばれしているうちに真由さんにも何回か会ったけど、接点なんてそれだけだし、どうして俺が告白される事態になっているか全く理解ができん。


「気のせいじゃないです。最近会う機会が多かったのは姉に長尾さんに会わせてとお願いしていました」

「何となく、よく会うなと思いましたが……」


会ったとしても話す内容なんて、


 大学は楽しい?


 はい。


くらいなもので特にお互いの情報を言い合ったりなんてこともない。


「長尾さんが、私のことなんとも思ってないことはわかりました。でもチャンスを下さい。また会ってもらえませんか?」

 

 狡いぞ。

上目遣いのショートカット女子のおねだりに抗えるはずないじゃないか!

それでもなんとか抵抗を試みる。


「現時点でお付き合いは考えられないのですが」


 ビジネス口調で答える。

我が社は御社とのお付き合いはご遠慮願いたいのですよ。


 主に俺の平穏な生活のために。


「はい。最初はお友達からお願いします」


うん、常套句きた。

これはこのままフェードアウトしても怒られないやつだよね。

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