下・かぼちゃ男の仮面の下。
雨が降り続けている。
今日はブギー・マンは現れるだろうか?
既に彼の身元は特定されてしまっている。
牙口令谷は、いつも半グレが集まる街を放浪していた。警察官達も張り込んでいる。
……きっと、奴は現れるような気がする。
強い予感がしていた。
「応援お願いします。ブギー・マンが、S区に出ました。被害者もいます」
無線から声がした。
刑事課の連中だろう。
令谷はS区へと向かう。
事件現場は凄惨を極めていた。
被害者は十七歳男子高校生、全身を滅多刺しにされ、特に顔の外傷が酷かった。警察官達は現場検証をしていた。令谷は周辺を窺う。明らかに自分を狙っている。見られている。令谷は視線を感じる方角へと向かった。気配は令谷を誘っている。場所は高校があった。グラウンドだろうか。
パンプキン男の影が、令谷を見下ろしていた。
校舎の二階に、そいつはいた。
げたげたげたげた、と、笑っている。
令谷は拳銃を向ける。引き金を引く。
パンプキン男は地面へと飛び降りていた。
令谷は冷静に、ブギー・マンの動きを眺めていた。
パンプキン男は距離を詰めてくる。
動きは単調だ。
普通の人間なら、この男の攻撃を眼で追えないだろう。だが、令谷は違う。ブギー・マンの攻撃は、手に取るように分かる。
令谷は左肩と左膝の辺りに弾丸を撃ち込んだ。
ブギー・マンの右腕は今なお動いていた、ナイフが飛んでくる。令谷はそれを避ける。
令谷はカボチャの仮面を蹴り飛ばして、顔面を拝む事にした。
パンプキンのマスクの下には、精神に異常をきたした顔中が火傷後だらけの男が舌を出して笑っていた。
令谷は拳銃に引き金を引こうとして、止めた。
令谷は無線で刑事課の連中を呼ぶ。
†
真壁淳太は逮捕された。
殺人犯として、法の裁きを受ける事になる。
「殺すつもりじゃなかったのか?」
崎原は首を傾げる。
「さあ。殺すつもりだったよ。だが、何故か殺せなかった」
「同情したのか? 顔の火傷はイジメによるものだってな。本人がそう証言している」
「なんなんだろうな。一般人共ってのはな」
連続殺人犯を生み出したのは、人間社会の業だ。酷い不良達のイジメによって、ブギー・マンは生まれた。そしてある時、彼は社会に復讐しようと考えた。
…………、真壁だが。彼を虐めていた不良達を殺しに行く事が出来なかったらしい。復讐に行こうとする度に恐怖に苛まれていたのだと。
だが、間違いなく、真壁淳太の人生を奪ったのは、イジメっ子達だった。彼は虐めによって、人生を狂わされた。雨の日の夜に、真壁は金髪の不良達から顔に灯油を掛けられ、顔に火を付けられたのだと言う………。そして復讐者にならざるを得なかった。だが、当時のイジメっ子達と似たような容姿の者達に、その復讐の牙は向いた。
令谷も同じだった。
彼の人生を奪ったワー・ウルフに復讐出来ずに、他の連続殺人犯達を狙い、時には殺害している。令谷は苛立ちを隠せずにオフィスの外で煙草を吸っていた。
二ヵ月後の事だった。
ブギー・マン、真壁が拘置所から逃げ出した。
特殊犯罪捜査課の者達にも、改めてブギー・マンを始末するように言われたが、令谷はどうにも気が乗らなかった…………。
了
連続殺人鬼『ブギー・マン』。 朧塚 @oboroduka
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