パンデミック

 一世代前、とあるウイルスが世界に広がり、大変なことになったという。倦怠感やら味覚、嗅覚がなくなるやら、大変なウイルスだったそうだ。

 しかしそれは過去の話で。今は他のウイルスが蔓延している。一世代前の、そのウイルスよりも凶悪で、人類は瀕死だった。絶滅を前にした人類は、種を絶やさないためにクローンを作ることにした。そのおかげか、今も絶滅せずに済んでいる。クローンでない俺のような人間は、オリジナルと呼ばれている。オリジナルは世界の人口の32%まで落ちた。殆どがクローンである。数字では理解していても、高校生の俺にとっては遠い世界のような話で。このクラスにいる人の半数以上がクローンかと思うと、中々怖い。

 そんな中、俺の彼女はオリジナルであった。彼女はとても元気で、可愛かった。彼女の親とも仲が良く、家族ぐるみで遊びに行ったこともあった。しかしそんな彼女はウイルスによって死んでしまった。突然の出来事で、何のことか分からなかった。冗談だったならよかったが、現実はいつだって残酷である。

 後日、彼女の両親はクローンで蘇らせることにした。彼女は蘇った。オリジナルの時の脳は生きたまま保存していたので、クローンに移植した。

 本当の意味で彼女は蘇った。では、それは本当に彼女なのだろうか。性格も、元気さも、態度も何もかも彼女のままである。だが、死んだ時の記憶はないと言う。自分はオリジナルであると思っているが、体がクローンなのも認識している、と。


 俺もいつかそうなってしまうのではないかと思うと、少し気が狂いそうになる。

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