ワタシノモノガタリ

夜の風

　夜に吹く風はいい。

　静かで、涼しく、癒される。これは機械でも魔法でも再現不可能なものだ。例え、どれほど似ていたとしても、それは本物ではない。あくまでも“似せたもの”でしかないのだから。

　朝はどうも苦手だ。暑いし、溶けてしまう。

　日差しが強いから、毛布を被って影を作っても、熱はこもるから暑い暑い・・・。四季は美しいものばかりだが、夏だけは嫌いだ。

　これは友人の話だが、夏は地下にいると良いのだとか。特にエアコンが付いた部屋にいるのがベストだという。日差しは当たらないし、暑さにも困らない。唯一困るのは食料といったところか。地上に出れば沢山沸いているが、上手く疾走させたように見せなければ、奴らに存在を悟られかねない。

　だがボクは、常に地上で過ごすことにしている。癒しの風は、エアコンでも再現なんてできない。溶けて死んでも、その辛さは風が癒してくれるだろう。