俺のスキルが草とかマジ草www〜クソスキル『草』を使いこなしたら、無双&世界最強!?〜

俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き

一章 英雄の誕生

第1話 エピローグ……?

「君のスキルは…………」


厳かな雰囲気に包まれた街の教会。

その真ん中で俺は、司教様を見つめて息を呑んだ。


良いスキル来い。

勇者とかそんな伝説級じゃなくていいから、普通に生きていけるようなスキルを下さい。


目とともに口を閉じていた司教様が、ゆっくりとつぶやく。


「『草』です…………。」


「はい? す、すみません。少し耳が詰まってるみたいで聞き取れませんでした。」


俺は司教様がなんと言ったのか理解できず、聞き返した。


なんか、草とか聞こえたけど、そんなの多分聞き間違えだよな。


うん、きっとそうだ。


スキルってのは例えば『聖女』『勇者』とか、『魔法使い』や『剣士』とか、そういう一生に一度しか得られない奇跡の賜物だもんな。


そんな、『草』なんてあるわけないさ……。


俺は自分をそう納得させたが、体はこの漂う明らかに普通じゃない空気に変な汗をかき始めた。


「そうですか。ならばもう一度言いましょう。」


司教様が深く頷き、カッと今まで閉じていた目を開いて、


「神が君に与えたスキルは『草』です。」


変わらずに厳かで渋い声でつぶやいた。


「……………………」


司教様が再び目を閉じて黙ったことで、街の中心にあるはずの教会に、怖いほどの静寂が訪れる。


「…………そ……だ……」


俺は自分の拳を痛覚が悲鳴をあげるまで握りしめ、絞り出すように声を漏らした。


スキルが………生きていくためにいちばん大切なスキルが…………よりにも寄って………。


グギィッという人の体からは鳴ってはいけない音が聞こえたと当時に俺は、大きく息を吸って叫んだ。


「嘘だっ!『草』なんて嘘だぁっ!!」


人生の中で最も大きな声で、喉が痛むなんて気にせず叫ぶ。


「嘘だぁああああ! んなわけないっ!! おい、冗談だよな!? ドッキリだよな!?」


俺はもう堪えきれずに、司教様に詰め寄ってその純白の服の襟を掴み上げて吼えた。


嘘だよな!? 嘘なんだよなぁ!!?

お願いだから…………嘘だと言ってくれ……。


「すまない。私からはそれしか言えない……。神は君にその力が適しているとご判断されたんだ。君もすぐには受け入れられないとは思うが、これから死ぬまでの長い時をそのスキルとともに歩むんだ、覚悟は決められなくても準備はしておいたほうがいい。」


司教様は俺から目をそらすことなんてせずに、真っ直ぐに俺を見つめて、優しくつぶやいた。


「……ありがとうございました…………」


俺は込み上げてくる感情をグッと堪えて、司教様の襟を手放す。


「取り乱してしまい、すみませんでした。」


まさしくお先真っ暗。

ガクガク震えて左右に揺れまくる脚をどうにか動かして、俺は教会を後にした。





  ◇ ◇ ◇






俺はクラル、ごく普通の田舎街に暮らすごくごく普通の15歳!!


ある日俺はスキルを教えてもらうために教会に行ったんだ!


そしたら大変、『草』なんていうクソスキルになっちゃった! クラルどうしよう!?


次回!! クラル死す!!!

ぜってぇ見てくれよな!!






そんな風にハイテンション自己紹介をぶちかませたのならば、どんなに楽なのだろうか。


「クソぉ……草なんてクソだ……」


俺は下がりまくったテンションをそのままに、町外れにある川の縁に座り込んで、草なんてクソという、それこそクソみたいな韻を踏んだ。


「なんで、草なんだ……草って、草ってなんだよ……。それでどうやって生きてくんだよ、肥料でも撒けるのかよ。 歩いた後にRPGのキャラたちみたいに草が連なっていくのかよ? なんだよそれ! 気持ち悪いだろっ!」


いつもならキレのある自作自演ノリツッコミも、この落ちたテンションではいまいち決まらない。


俺はそこら辺に落ちているなんの変哲もない石を、静かに流れている川へと投げる。


ポチャン


そんな心地のいい音を立てながら、石が沈んでいく。

石は沈んでいくし、俺の意思は沈んでるし……。本当に、この世界クソすぎて草ww


こんな事をモノローグにでも書いてしまったときには、周囲から


『草に草生やすなよ草ww』


『↑お前もやろwwwマジ学なべよ草ww』


『お前らwwwwマジ学習機能無いのかよ草www』


『彼らの生やした草によって、地球温暖化は防がれた。今思えば、一番最初に草にwwをはやしたニキは、これを想定して……いるわけねぇな草ww』


『や さ し い せ か い』


『や さ い せ い か つ』


『ここまでがテンプレ』


なんてノリと連携の良いツッコミを喰らわざを得えないだろう。


これだから匿名掲示板はやめらんねぇぜ。


諸君らはいきなり俺が日本の知識を持ち出したことに違和感を抱いたかもしれないが、それは正解だ。


俺は異世界転生者でもなければ神様でもない。ただの普通の一般人だ。


では何故知ってるのかといえば、『記憶の混ざり』というやつのおかげである。


『記憶の混ざり』とは、簡単に言ったら自分のものではない記憶や知識があること。


何万人かに一人現れる特殊な能力。


ただ、その内容もバラバラで異世界の賢者の知識手に入れて大儲けの人もいれば、主婦の料理のワンポイントを知ってありがたいけど有り難くないって人もいる。


俺の場合は『日本』という異世界の知識があるのだ。


この日本というところの知識はみていて……というか知っていて面白くはあるが、環境が違いすぎて生活に活かすことはできない。


「…………はぁ……」


俺は座り込んでため息をついた。


本当に、一生をともに過ごす相棒とも言えるスキルが、よりにもよって『草』なんて……俺はもうどうやって生きていけば良いんだ。


「止まれ俺、ネガティブ思考はだめだ。逆に考えろ、うちは農家だろ。それなら草なんてクソスキルでもなんとかなるはずじゃないか!」


ふんすと俺は鼻息を鼻から吐いて花を揺らしながら、立ち上がった。


「よぉし、草なんてどんなもんじゃぁい! 勇者がヒーロって言われるなら、俺は草を極めし謎の美少女、草wwくさのクサ太郎になってやりゃぁ!!」


俺は女じゃないし、仮に女なら太郎って名前はどうなんだとかいうツッコミが飛び交っているところだと思うが、俺がそんな事を考えていると思うのかと、逆にツッコんでやりたい。


人生のモットーはノリと勢い!

好きな言葉はなんとかなるさ!!


俺はそんな無責任な格言を心のなかで叫びながら、地面にダイブした。


「ぐォうブォッ!!」


うつ伏せに行ったから地面に鼻が当たって痛いとか、河川敷に生えてる草がチクチクして痛いだとか、なんかこの地面変なにおいするとか、そういや近所のアニキが地竜の散歩ここでやってるなとか。


そんなマイナスの思考は一旦放棄して、俺は全力で、全力でッ!!


「お”や”す”み”ィ”!”!”」


母音子音ごっちゃまぜで、何ならビックリマークにまで濁音をつけた豪快すぎる就寝の挨拶をかまし、俺は全力で睡魔に飛び込んでいった。


『胸が大きな美少女に囲まれて全肯定される夢が見れますように』


そうぼんやりとした意識の中で思ってすぐ、俺の意識は遠のいていく。





意識が完全に飛ぶ直前、




『草ポイントが加算されました』




そんな無機質な声が聞こえたような気がした。

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