言葉にするということ

44

サキの世界

第1話「喧嘩」

 遠距離恋愛中の彼女と喧嘩をした。


 理由は些細なもので、でも重要なことで。


 最近、彼女のサキは大学のサークルや友達同士での飲み会が多く、家に帰ったという旨の連絡が来るのが遅い。

 進学せずに就職した自分には大学生の飲み会の頻度なんて分からないし、そもそも帰ってきたという旨の連絡なんて義務でも何でもない。ただ単純に、寝る前には電話で〝おやすみ〟と言うのが、高校時代からの習慣だった。

 別にルールとして課すつもりもないのだけれど、それが無くなるのは正直少し寂しい。


 しかし、そうするとだ。必然的にサキが飲み会から自宅に帰ってきた時に連絡が来るわけだけれど、その際に少し電話で〝飲み会が多すぎないか〟〝誰と飲んでいるんだ〟と、問いただしてしまった。

 サキは帰って来てすぐで、きっとイライラしてしまったのだろう。そこから口論が始まり、〝おやすみ〟とも言えずに電話を切ってしまった。


 そして悶々とした気持ちで眠り付き、目が覚めたとき。


 俺は、彼女と入れ替わっていた。

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