公爵は社会性のある猫である
@charanporan
第1話 猫ちゃん転生
寝息が聞こえる、腹が温いな。どうやら一眠りしていたらしい。穏やかな表情で笑う特徴のあるじいさんの膝の上でオレンジ色の光が差し込んで目覚めてしまった。良きベッドであった。スッとじいの手が伸びる。「触るでないぞ」とそっぽを向く。「じいよ、この家を頼むぞ」と「にゃーん」と鳴き声をもらし、ストンッと静かに着地をしては、外に出かける。
「うわっ!黒猫だ!!」と、何やら色とりどりの鞄を背中に抱えた小さい人間の群れが奇異な目でこちらを見ている。慣れたものだ、少しやかましく「シャー!!」と鳴いてやれば、嬉々と逃げていく。何が楽しいのやら。小学校を過ぎれば、ハスキー犬がいる一軒家がある。白い毛並みで鋭い顔つき、公爵を良く見てくる。まあ、鎖に繋がれている以上何も言うこともないが寝てる時に猫パンチをお見舞いする。その後に、勢いよくその場から立ち去る。
だんだん冷えて薄暗くなっていく。街中に出てみると、大小ある人間が特定の家や場所に帰っていく。公爵を見つけては、声を掛けて頭を触ろうとしてくる奴もいる。触れるなと軽快なバックステップで避ける。路地裏に出没しては、アスファルトの壁の上に出没する。一通り人間模様を観察しては、飽きて帰路に着く。
突如響く甲高い音と眩しい光に襲われる。「公爵とした事が車に轢かれ………」
「起きてくださーい」と目を覚ますとそこは白い光で包まれた世界だった。「目覚めましたか?」、白服の天使というか女神というか、白い服を着た女性がそこには立っていた。聞いた事があるぞ「ここは無の場所か?」問いかけてみる。「ええと…動物によって解釈は違いますね」電子データをバラバラとタブを広げては忙しなく探している。研修中だろうか。「まだ主人に別れを告げていないのが心残りなんだが、その前に肉体は無くなってしまったか」呟いてしまった。「その件で来ましたよ。ニャンちゃんは、暫く人間として過ごす事になりました。期間は忘れちゃいました。テヘッ」「テヘッじゃないよ、そこが重要だろうと」固唾を飲み込む。暫く説明を聞いた。どうやら短期間だけ、とどろき•黒という名前の人間の肉体を借りるそうだ。本人の脳は記憶という形で残っているが、意識は潜在に潜り込んで出てこないらしい。私の記憶と彼の肉体の記憶は結びつき不自然な形ではあるが、自然な形で世の中に溶け込むみたいだ。最後に重要な事を告げると女神は答える。「今から入る人間の器についてやってほしい事が一つあります。その器の負債を軽くしてほしいのです。それをすればもう一度現世に戻り変わらない日々を享受します…これにて音声案内は終了します」「そこは肉声やろ!」と公爵は肉球を押し付けた。
「承諾した。しばらく人間になろう」そう答えては「そう言ってくれると思ってました」と女神が答えた瞬間。急激な眠りに落ちた。
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