第8話 都市脱出編


 ロイヤルストレートフラッシュならば、叶えられるのではないか? とリーチは考えた。 なにを? それは――


「これから先、みんなどうするんだ?」

「決まってる」

「ああ、アカリもそうだよな?」

「……うん」


『学園脱出!』


 四人は声を揃えて言った。方針は決まった。行くべきは壁の向こう、機動エレベーターの見えない先へ。

 決まったら一直線。壁に向かって突き進む。

 四人は隊列を組んだ。前方にリーチ、後方にアリア。

 中央にアカリとシームレスを配置。

 追手の方が強いと判断しての陣形。

 リーチは戦力外、とまではいかないが、若干、問題アリと言ったところか。


「何か不満が?」

「……いや」

「素直なのは良い事だぜ、リーチ」

「りいち、気にしないで」

「気にしてないって」


 なんか二人から慰められて、ちょっとイラつくリーチ。その怒りをぶつける相手が現れた。


「防壁委員会だ! 止まらないと撃つ!」


 銃のような物を手に取った生徒が飛び出して来る。


「次世代テーザーガンだ! !!」

「了解」


 手のひら前にかざすリーチ、電撃が放たれる。それをするリーチの右手。


「なんだこれ……?」


 一番驚いたのはリーチ自身だった。しかし周りはさして気にした様子も無く。


「お前の異能だろ?」

「記憶喪失くん大変だねぇ」

「りいち、がんば」


 なんだかしっくりこない。今のはなんだ。リーチの頭は疑問でいっぱいだった。


「止まれ止まれ止まれ!」


 連射される次世代テーザーガン、電撃が辺りに撒き散らされる。それを手をかざすだけで、無効化される。この軍服の効果か? とリーチは考える。

 しかし違う、と己の身体、そう、蓄積される何かがあった。そう実感するリーチ。

 異能、それを実感する。自分にも備わっている。自分もガブリエルの生徒だと。

 後方、アリアが守る方向から、爆発音が響いた。思わず振り返る。


 


 アリアの必死の声が響く。続いてシームレスが。


「此処は俺らで抑える!」


 敵は――


「風紀委員長『煉獄包囲バーガトリ』、参る」

「オリジナル……邪魔はさせない……!」

「馬鹿なヨシュアめ、レプリカが勝てると思うなよ」


 アリアとシームレスが異能を展開する。ただしアリアの異能はサイコキネシス、不可視だったが。緑のホログラムPCを叩くシームレス。


「レッドリスト! 囲まれるぞ!」

「分かってるよ世界掌握ワールドハック!」


 暴風、竜巻が業炎を吹き飛ばす。それに対抗するように逆回転の竜巻が発生する。


「ガブリエル最高位は俺だ!」

「簒奪者がよく言うよ」


 アリアはヨシュアを嘲笑う。ヨシュアは激怒して竜巻は勢いを増す。比例して増幅されるアリアの竜巻、二人の力は拮抗していた。

 煉獄包囲の炎が迫る。右手を前へとかざし左手をアカリに伸ばす。


「アカリ! 行こう!」

「……うん」


 都市型学園ガブリエルの内界と外界を隔てる壁に向かってひた走る。リーチとアカリ、二人、手を繋いで。

 もうすぐ、迫る、出口、見た事のない景色へ――


「あーあ、つまんねぇ」

「!?」


 目の前に現れた眼帯の大男。その体躯から放たれるプレッシャーは、恐ろしい程だった。


「よお。坊主、『筋力強化』って知ってっか?」

「!?」


 壁の目の前まで迫っていた二人の前を遮り、突如として現れる。一瞬で距離を詰められた。記憶喪失ながら武術の心得が身体に染みついていたリーチでさえ、捉える事が出来なかった。リーチの鳩尾みぞおちに大男の一撃が入る。


「かっ……はっ……!?」

「軽いな、坊主」

「りいち!」


 そこに後ろから、ヨシュアと風紀委員長の二人が現れ。


「アリアと……シームレスは……?」

「あんな雑魚、始末したさ」

「風紀委員の名の下に」


 そこでアカリがリーチの手を離した。


「……

「アカリ!?」


 アカリが青白く発光する。


「受胎告知……? エネルギーを操るだけの力が何を……?」

「へぇ、面白れぇもん持ってるなお嬢ちゃん。いいね、


 世界が光に包まれた時、リーチはダストゾーンに居た。

 ようやく気付く、この世界はアカリによってループしていた。

 記憶喪失は未だ解けないまま、一つの疑問が氷解する。

 そこにシームレスが現れ――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

都市型学園ガブリエル 亜未田久志 @abky-6102

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ