都市型学園ガブリエル

亜未田久志

第1話 ?の章


『受胎告知、臨界点突破まで九十秒』

「もうすぐだ……こんな狂った世界に終わりが来る……」


 たくさんのモニターが並んだ銀灰色の部屋。モニターを眺めるオペレーター達。映し出される映像には、一人の制服姿の少女。白銀の髪に金色の瞳、セーラー服に身を包み、円筒形の入れ物に浮かんでいる。そう、水中にいるわけでもないのに浮かんでいる。世界に終わりが来る。そう語った少年が笑い出す。そこに。


 バガン! と銀灰色の部屋の扉が蹴破られた。


「ヨシュア! ヨシュア=キングストン! お前だけは許さねぇ!」

「来たか、富永理一。だがもう遅い。受胎告知は間もなく臨界点を突破し、ガブリエルもろとも吹き飛ばす!」

「させるかよ!」


 理一と呼ばれた少年はヨシュアと呼んだ少年に殴りかかる。しかし。


「私はこの都市型学園、最高位のサイコキネシスト。物理攻撃など通らない」


 理一の拳は空中で釘付けにされる。そのまま捻られる腕。ヨシュアは嗤う。


「このまま捻じ切ってやる!」


 その時だった。


『サーバーに侵入者! 受胎告知制御プログラムが書き換えられていきます!』

「なっ、馬鹿な!?」

「ナイス、シームレス!」


 気が逸れたおかげで念動力の拘束は解けた。駆け出す理一。目指すは円筒形のケースに入れられた少女の下へ。


「させるかぁ!」

「サイコキネシストならこちらにもいる」


 銀灰色の部屋の扉から現れた新たな少女、赤髪をたなびかせ、そこに降臨する。


「オリジナル……!」

「出来の悪い弟よ、お前の野望もここまでだ」

「終われるかこんなところで! 都市の破滅までもう少しなんだ! エネルギー供給量を上げろ! 百二十パーセント!」

『機械の破損の恐れが……!』

「構うものか!」


 理一が少女の下へとたどり着く。その名を叫ぶ。


「アカリ! 目を覚ましてくれアカリ!」


 しかし少女は目を覚まさない。機械の駆動音が鳴り響く。無機質な音、余命宣告にも似た、ギロチンの駆動音のようだった。

 光が室内を包み込む。思わず目が眩む。アカリと呼ばれた少女から放たれたものだった。

 

『供給率、百二十パーセント! 臨界点突破まで残り十秒!』


 オペレーターが騒ぎ立てる。カウントダウンが始まる。


 十。


「アカリ、起きてくれ! 頼む! アカリ!」


 九。


「忌々しき都市型学園ガブリエル! 消え去る時が来たのだ!」


 八。


「シームレスは何やってんだ……制御権を奪ったんじゃなかったのかよ……!」


 七。


「これは少しマズい事になったな、リーチ?」

「そんな悠長な事言ってる場合じゃないよ姐さん!」


 六。


『悪い遅れた! 制御権は奪えたが、直接入力には敵わん! 悪いがそっちのオペレーターを止めてくれ!』

「そう言う事は先に言えよ!」


 機材の前に居るオペレーターに向かい駆け出す理一。しかし。

 

 五。


「通さないよ」


 異能力兵共の妨害に遭う。

 理一に立ちはだかる、異能力者の力は発火能力パイロキネシス

 その炎は圧倒的火力で辺りを薙ぎ払う。

 しかし理一はその間隙を縫って、突き進む。


 四。


 オペレーターの一人を掴み、機材から引き剥がす。

 しかし、オペレーターの数は三十人は居る。間に合わない。


 三。


「臨界点突破まで残り二秒!」

「アカリィ!!」


 二。


 光が部屋中を包み込み、すると円筒形のケースに入れられたアカリが目を覚ました。


 一。


「リーチ。


 零。


 極光。理一の意識は暗転した。

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