早熟な大人
樺冠者
節句の四番
わたしは土日がお休みで、まことはお休みなんて決まってない仕事だった。だから、この日にふたりで過ごすのなんて久しぶりだし、まことが笹を欲しがるなんてことはなかった。うっかり夢中で画用紙を切ってしまってできた短冊は三十七枚。計画性のない仕事だねってまことは笑う。幸い私たちにはお願いはたっぷりあるから、せっかちな流れ星に代わって叶えてほしいね。やっぱりそんな会話も、むかしを思い出させて、でも、どこかぎこちなくて。まことの笑顔はいつまで見られるのかなって、もやもやがわたしを襲うんだ。
結局、願い事をいっぱい書いたら困らせちゃうってわたしの童心がいうから、余った紙は飾りにした。天の川の飾りも、提灯の飾りも、わたしは破れないようにって太く切ってしまう。芸術性を求めるまことはかきたま汁の卵みたいに細く切るから、破れてしまう。もっとも、かきたま汁もわたしはどばっと入れてしまうんだけど。ふたりの作品が笹ギャラリーに手際よく飾られる。ふむふむ、対照的なおふたりさんだ。どうにか互いに補えないもんですかねぇ。芝居めかして言ったまことも、分針が上を向くにつれて口数を減らす。わたしも行きたくない。知りたくない。でも、
「行くよ」
わたしは言わなくちゃいけない。このままだと、静寂に耐えかねたまことがわたしの代わりに言ってしまいそうだったから。まことに励まされてるようじゃいけないんだ。
「うん」
真面目な雰囲気で、軽い口調でまことが答える。
二人の世界から、陽光とセミの世界に飛び出すと、空はかきたま汁の雲が覆っていた。
**
診断は予想通りだった。
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