第50話建国祭 2日目 2

キィン…


それは転送陣が弾ける音だ


ヴァネッサ、シャイン、シャイニーは既に転送陣ラスクロへと帰っていた


「アレクシアに会えないのは残念だけど…ひとまずの目的は達成しちゃったし」


シャインとシャイニーは先にラスクロの王宮へと帰って行った

残されたヴァネッサはたった今弾けて消えた転送陣の再設置をしている。


ラスクロ王宮の秘匿された技術の1つ「転送陣作成」


だが長い歴史の中でそれは研鑽もされず、また継承も曖昧で既に数度使用すれば壊れてしまう脆い物となってしまっている


「良いのか?それは秘術だろう。ウルグインの私に見せるなどしてはいけないのではないか?」



「あー王様いたの?良いわよ、もう廃れた技術よこんなの。それより良かったの?言われたようにはしたけど」


「んむ、構わんよ。どのみちそろそろ考える時期ではあったのだ。アレクシアとレオノールの婚姻は」


「そりゃねぇ。ラスクロ王が逝去して、隠し子だった私と弟たちが王宮に招かれて、今日から君たちは王族だーなんて言われて」


ヴァネッサは身振りを交えながら軽快に話す


「しかも弟1人はウルグインに婿に行け、もう1人は嫁に貰えーだなんて言われてさ。私に至ってはスロウの国に嫁に行けって言われて・・・身勝手な議会の決定に従って・・・」


「不幸だと思うか?己の身を呪うか?」


ウルグインの王は、ヴァネッサに対して

政略結婚に使われる身の上をどう思うかを聞いている


ひいてはそれはわが子と同じ様な悩みであると思ったからだ

ウルグインの王族はある意味かなり自由だ

己の婚姻相手は自ら選ぶ事が出来る


それは今まで、新興国家ゆえの様々な理由も絡んでくるのだが問題はなかった

だが今のウルグイン三姉妹はまるで婚姻をしようとはしなかった。


それゆえ王は、まわりの国々に対して見合いを申し込んでいたのだが全て彼女らの言い分によりご破産になってきていた


そこにラスクロからの申し出である


王はある提案を投げかけていた。


かつてのご破産をふまえ、必ず成功させる方法として王が提示したのは、王の誘拐、その身代金代わりにヴァネッサの弟達との婚姻である。


一度婚姻を結んでしまえばあとは破棄は出来ない


それを見越した作戦であった

誘拐された後は、アレクシアとレオノールが話し合い、婚姻を受け入れるだろうとの目算である



「不幸・・か。でも私は幸せだと思うわ。弟達も。ラスクロ王が逝去しなければ私は、きっと一生をラスクロのダンジョン守護に捧げていたし他の国に出ることは無かった。弟達もね。」


「そうか。嫌な役回りを押し付けてすまないな。だが私にとっては幸運だ。なによりそなたらは強い。ウルグインには強い血は、良き血であるからな」


「そうみたいね。分からなかったけど私達は強かったみたいね。ただー話が違ったわよ?レオノールもかなり力があるみたいだし、アレクシアはそれ以上とも言っていたわ。」


「そうだな・・・一年前この話が出た時はまだ違ったのだが」


ヴァネッサの言うダンジョン守護。それはウルグインのダンジョンの冒険者達とやっている事は相違がない。だが長い年月の差があり、ラスクロのダンジョンはかなり攻略されており、当然守護者も強く成長していたのだ。


「何があったの?前に見た時よりレオノールは強くなりすぎている。もちろんあなたもよ、ウルグインの王様」


ヴァネッサがそう言うとウルグインの王は神妙な顔つきになる


そしてゆっくりと話し始めた


焼肉ゴッドーカンザキの存在と

今まで食べたモンスターの肉の話を





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「なるほど、カンザキね。」


「ああ、だがカンザキにはルシータが嫁に行くだろう。だから障害になるとは考えておらん」


「ふぅん、そんなに強いの?興味あるわ」


「辞めておけ。ルシータとカンザキは別格過ぎるのだ。いかにそなたらが強かろうとも太刀打ちは出来ぬよ」


王は悔しそうな顔をして言った



「まあ、それはそのうち確かめられるわね。でも王様ー侮らないで。私達は本当に強いみたいだから」


「ああ、確かめるが良いー私は止めはせぬよ」



「でもこれで上手く行けば、ウルグインとラスクロは親戚って事になるわね」


「議会の思うツボだろうがかまわんよ。我が国はまだまだ弱者だからな」


「私は来年にはスロウに行く予定だから、スロウとも親戚になるわね」


「それが政。まだわが子には教えて居らぬから丁度良いのだ」



話が一息ついた所でシャインがやって来た



「姉さん、またダンジョンにアイツが産まれていた。倒しに行かないと行けない」


「分かったわ、今から行きましょう」



ウルグインの王が尋ねる


「アイツとは?」


シャインが答えた


「黒いドラゴンだ。王様も来てみるか?産まれたてだからまだすぐ倒せるほどに弱い」


「その代わり成長したら私達3人ががりでも倒せるかどうか分からないモンスターよ」


「ふむ、見させて頂こうか」


「いいわ、いらっしゃい。こちらの転送陣からも行けるから」


ヴァネッサは作り直した転送陣へと進んだ




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そこには空があり、巨大な湖があった

風も太陽も月も


先程までは確かに早朝だったはずなのに、そこは夜中

但し巨大な火山があり周囲は真っ赤に照らされている


「こ、これがダンジョンか!?」


「そうよ、ウルグインのは違うんですってね」


「そ、そうだ。しかしこれはまるで!違う世界ではないか!」



ウルグインの王はーまだダンジョン100層以降を知らない。

それにラスクロのダンジョンは全てこのタイプである


「こっちだ」


シャインに連れられ着いたのは密林の中にある巨大なクレバス

巨大な崖だ


「ほら、あそこに巣を作っているだろ?」


見れば崖の真ん中あたりに薄く穴が掘ってありその中には小さなドラゴンが寝ている


小さな?


いや、距離を考えればあれでも・・



「10メートル程のサイズね。小さいわ」



そのサイズを小さいと言うラスクロの3人



まさか・・あれを小さいだと!?


かつてウルグインを襲ったドラゴンと同サイズではないか!!


「じゃ、ちゃっちゃとやっちゃいましょ。今夜はご馳走ですよ王様。ドラゴンの肉は美味しいですから」




ヴァネッサはそう言うとフライで飛び上がった




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