第24話ダイダロス編6 ダンジョン60層へ

さて、それからさらに数日が経過していたカンザキ達はようやくにして、鉱山ダンジョンの59層に到達していた所である


今は地図上で見る限りの最後のセーフゾーンで休息中だ


数十人もの大所帯である。これだけの人数でのダンジョン内の移動はどうしてもかなりの時間がかかってしまう


さらには王妃や姫を連れての移動ゆえに、気も遣う


ダンジョンに設置されていた防衛機構はミタニがここまでは完全に無効化している。それ故にけが人などは出ていない


ガーディアンたるゴーレムを最下層に閉じ込めたのも、逆に防衛機構を利用した為だ


彼女の武器は「魔導銃」という加工された魔石を打ち出すピストルだ


打ち出された魔石はその属性に応じて凄まじい威力を発揮して目標を攻撃する


実の所、それがミタニ達が全ての魔石を持っていなかったことに直結する


あった魔石は全て銃弾として加工し、使えるようにしていたのだ


それはゴーレムさえ倒せれば開放されるからと全力で挑んでいたからに他ならない


だが失敗して敗退する事になる

その際にした怪我が元でミタニや兵士達は寝込み、王や王妃、姫様までここに閉じ込められて道ずれになることになろうとは、思っても見なかったことだったのだ


そしてそこから1ヶ月程たった頃、何とか回復した兵士達は無くした魔石を補充しようと、怪我人を除く全員が掘削作業という慣れない作業をしていたのだが、


どうやらその頃から病気が蔓延し始めたのだ


とりわけもともと体の強くなかった国王と怪我をしていたミタニは症状の進行が早かったらしい


その流れの中、ついに国王は亡くなってしまったようだ


実際にミタニも死の間際まで追い詰められていたのは確かである。

あの毒に侵された姿はかなりのものであった


だから、そんな中でカンザキに救われた事は奇跡に近かったとミタニは自分の愛銃の手入れをしながら感謝する



「今日ここで休んだら、いよいよ明日にはゴーレムとご対面だな」


今日もカンザキは焼肉の用意をしている

と言うか、全員ほぼ毎日の様に焼肉やら同じ野菜炒めを食べているのだが


「そうだね。カンザキが魔石を持っていて助かったよ。少ないけど銃弾の補充が出来た」


ミタニはカンザキから提供された魔石を加工し、弾丸として用意している


だが実際はココから脱出してからも問題が山積みではあるのだけれど


「ひとまずはゴーレムをしばくか。俺一人でやれると思うけど、どうしてもついてくるのか?」


「あたりまえだろ。ボクを傷物にしてくれたにっくきゴーレムはただじゃおけないよ!」


すいぶんと元気になったものだ


「それにいくらカンザキが強くてもアイツの自己修復機能はやっかいだろうしさ」


久々のボス戦って感じになるのかねぇ?


そんな話をしていると王妃がやってきた


「カンザキ様、本当に大丈夫でしょうか?」


不安なのだろう、それが顔色に現れている


「大丈夫ですよ、これでもウルグインのダンジョンで鍛えてありますから」


王妃は首をふる


「いいえ・・帰ってからが問題なのです。実は王政の廃止案は前からありましたが、正直、実際に執行されているとなるといったい誰がしたのかが問題なのです」


「そうか、国王はここに居た間にだもんな」


「そういえばカンザキ、だれがボクの名前を語っていたんだい?」


俺はあの偽領主の容姿や雰囲気を話す


「うーん知らないね」


王妃も


「わかりません」


謎かぁ


「心当たりはありますか?その執行した人間に」


すると王妃は


「恐らくは王の弟君ではないかと思いますが。あのお方は以前より領主制というものを提唱していましたし」


話によれば、国王は本来の血筋ではなかったらしい

先代の国王は男子に恵まれなかった

そこで第一王女を妻とし、国王として後を継いだのが今の国王であったらしい

だが国王なき今、王となるのはその弟のはずだった


なのに領主制を?


妙な違和感があるな


だがまあ誰かがクーデターを起こしたのは間違いないな


さて、


それじゃあ寝て明日に備えるか

ここに来るまでにも数日を要している


早く帰らないとシアが不安にしていそうだ









翌日 60階層


階段を下ると、そこは広い部屋の様になっていた


「さてカンザキ君、あいつですよあいつ」


石で出来たゴーレムを指差しながらミタニは言った


「やっぱ結構でかいよなぁゴーレム」


俺はため息混じりに言った


「おやぁ?カンザキ君はゴーレムを知っているのかい?」


「まぁ、何度かやりあったことはある」


「ほお、その話は今度聞かせてもらおうかな」



とりあえず、ぶっ飛ばす


そう言ってミタニは銃を撃った


魔石の弾丸はゴーレムに当たる前にはじける。そしてうっすらゴーレムの周りにシールドが見えた


「げっ。なんか進化してる?」


「いいや、自己修復が働いてでシールド張れる機能が回復しているだけだろう!」


カンザキは一歩踏み出す

と同時にゴーレムの真横に立っている


「速い!?」


ミタニはあんなに速く動く人は見たことは無かった

だがギリギリ目で追える?!


カンザキはその手に持った剣を逆袈裟に切り上げた

バチン!と音がしてゴーレムの魔法防御結界がはじけ飛ぶ


「いいぞ、ミタニ!撃て!」


そう言ってカンザキはバックステップを踏む


ミタニは取って置きの銃弾を込めて乱射!

1発・・・2発・・・3発・・・着弾!

ミタニの撃った3発全てがゴーレムにぶち当たる


ガラガラとゴーレムの左上腕部が崩れる


「やっぱり硬いねえ!」


まるで余裕があるように言った

それは不思議な感覚だった。体がやたらと軽く感じるせいもあるだろう


ゴーレムは振り上げた腕をカンザキに向けて振り下ろす


カンザキはガードしようとシールドを構えて待ち受ける


「守れ風!」


ミタニが銃弾を狙い撃つ


カンザキのそばでパンッと弾けた弾丸から緑色の魔法陣が飛び出しカンザキをドームで覆った


ガイン!と大きな音がしてゴーレムの腕をはじきよろかせる


ミタニは防御も行けるのか?


遠隔サポートでもあり、攻撃も出来るタイプか


だがカンザキの今持つ剣ではゴーレムは切れない、こいつはそう言うものだから


「なんか奥の手は無いのか?」


カンザキはミタニに向かって叫ぶ


「あるさ!これから使うから!あとは頼んだよ!」


ミタニはテンション最高潮といった感じで叫んだ



ミタニがもう一丁の魔導銃を取り出す


二丁拳銃―


そして先ほどまでとは違い呪文を・・魔法を唱えている


すると一気にミタニの内包する魔力の圧力が上がっていく!!



「響け風よ!穿て木よ!」


「召しませ!召しませ!」


「オベロ…ン!」


発射された2発の弾から魔方陣


そこから召喚されたのは美しき妖精王オベロン



妖精王はゴーレムに向かい一陣の風を撒く

そして風がゴーレムを包むと


その体はボロボロと風化し、そして内側から木の枝が生える


ゴ・・・ガ・・・ゴ・・・・・・




これがミタニの奥の手か


さすがにこの世界に来ているだけはある、それなりの召喚魔法だ


しかしまあちょっと効きすぎだろ?


あの硬いゴーレムが崩壊しかけている


そしてボロボロと崩れるその中にゴーレムの魔石のコアが見えた


カンザキは隙を見逃さない。それを目掛けて剣を投擲した



ギイン!



剣はコアを砕き散らせた


「おーナイスショットー」


ミタニはうつぶせになって言った


「な・・何やってんだ?」


「んとねーボク魔力切れ。しばらく動けません。アレ本当に奥の手」


なるほど・・・

てか燃費悪すぎじゃないか?



「まぁ倒せたぞ。コアも砕いたから大丈夫だろ」


コレで無事に帰れるか









カンザキはミタニをおぶって皆の所へ戻った


部屋の外で待機していた王妃と兵士にゴーレムを倒した事を伝えると歓声があがる


そして、ゴーレムの向こう側にあった魔方陣へとみなで歩いて行く



魔方陣自体は多少の修理が必要なようで、こればかりはミタニの回復を待って修理してもらう


「50階層にあった魔方陣は出口側の奴がおかしいみたいなんだよね・・あそこのは正常なんだけどロックされたみたいに帰れなかったんだよ」


そう言いながら修理する

カンザキの持っていた残りの魔石を使い、さらさらと床の文字を書き直していった



まぁ言うとおりに出口側の魔方陣に細工してあるんだろうなぁ・・帰れないように


「っと、できたよ!直った!」


お。これでようやく帰れるか

そう思った瞬間に頭の中にシアとキャサリンへどう言い訳しようかを考え始めていた



そして全員集まり、そして転送される瞬間…ミタニは言った


「あ。これ何処に繋がってるんだろ」





知らないのかよ!

ってそりゃそうだな!





カンザキとミタニ、兵士と王妃とその姫は転送されたのだった





―都市ダイダロスの中心に―







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