第22話ダイダロス編4 そのころキャサリンは
さて、時間は少しだけ先に進む
皆さまこの男を覚えておいでだろうか?カンザキが鉱山へ捕らわれる原因ともなった男である
そう、ガルバだ
この男、ガルバはようやくあの牢屋から解放されていた
「まさか一週間も拘束されちまうとはよお・・カンザキは先に帰っちゃうし」
先ほどようやく釈放され、その際にカンザキは先に帰ると言っていたと伝えられたところである
「はぁ・・今回はいいとこなかったなぁ…」
目当てであった神酒は手に入らなかったし、
自分が悪いのだが捕まって拘束されるしさほどその記憶はないしでさんざんだったと思っている
ガルバは気分を切り替えてさっさとウルグインへ帰ることにする
カンザキに頼まれ落札した酒を魔導列車に積み込んで
一路ウルグインへと帰るのであった
◇
カンザキが出かけておおよそ2週間ほどたった日のことだった
「ルシータお姉さま!カンザキさまを探しに参りましょう!」
シアは真剣な表情で姉に迫っていた
「なんだってのよー。カンザキならたまにコレくらい帰ってこないことはよくあったよ?」
その日、キャサリンはちょっとだけ良い酒を飲みつつシアの相手をしていた
「それにねシア、ダイダロスは平和な街だって話だし」
「関係ありません!もうすでに2週間近くになりますよ!おかしいじゃありませんか!」
元は5日ほどの予定だと聞いていた、それが1週間以上も延びていることになるのだ
出かける前にカンザキが日にちは前後するとは言っていたがそれでも2週間は長いとシアは思う
本来であればシアは今すぐにも飛び出して行きたい
だけどあのカンザキさまがもし手こずっているような事になっていればシアの力ではどうしようもないかもしれないのだ
でも姉なら
姉ならカンザキの力になれると思っている
そう思えば、なんて自分は役に立たない弱い存在なのだろうか
「ちょ、シア泣かないでよ大丈夫だから!」
「お姉さまは!お姉さまはお強いのでしょう!カンザキさまを助けられるでしょう!でも私は・・」
シアは悔しいのだ
自分の力不足が
だからカンザキの力になりたくてもなれやしない
だから泣いてしまった
「まったくもう。そうだね、あともう1日2日待って帰ってこなかったら迎えに行きましょうか」
キャサリンは妹を慰めながらそう言った
キャサリンの膝の上に頭を乗せて泣いている妹の頭をなでながら
本当にもうこの子は可愛いんだからとキャサリンは優しい顔を向けた
その翌日である
やはり戻ってこなかったカンザキ
さすがに昨日シアにああ言った手前、明日も帰ってこなければ出かけなければいけない
行きたくないなぁダイダロス……
ていうかカンザキ、連絡くらい寄越しなさいよ!シア心配させちゃってさぁ!
それに……心配してるのはシアだけじゃないんだ
キャサリンはシアの様子を見に行くと、部屋はもぬけの殻だった
あれ?自室にはいないのか・・
店かな?
キャサリンは廊下をぬけて階段から
一階に降りる
厨房をぬけて、焼肉ゴッドの店内に入ると、そこにシアはいた
もう掃除をする所などないのに、毎日掃除などし尽くしているのに、シアは店内を綺麗に、綺麗に掃除をしている
シアはカンザキが帰ってきたらいつでも店が開けれるようにと
毎日掃除を欠かしていない
たとえ汚れていなくても
まったくうちの妹は……
仕方ないなあとため息をついて、キャサリンがシアに声をかけようとそばに歩いて行った時だ
ガラリと入口があいた
カンザキが帰ってきたのかとシアとキャサリンが期待した目で入口をみるー
しかし、そこに立っていたのはガルバだった
「ガルバ!帰ってきたの?カ……カンザキは?一緒に帰ってきてないの?」
キャサリンが不安そうな声で言った
もしかしたら、ガルバの後ろにいるかもしれないと辺りを見るが見当たらない
「あれ?カンザキは帰ってないのか?多分俺より1週間以上前に帰ったと聞いたんだが」
驚く素振りでガルバが言った
トクン…
心臓が跳ねる
キャサリンは慌ててシアを見ると、不安に包まれた真っ青な顔をしていた
「ガルバ!あんた誰から帰ったと聞いたのよ!」
キャサリンがガルバに詰め寄った
「おおおっと姉さん近い近い!」
まさかこんなに詰め寄られると思って無かったガルバは慌てて言った
「領主様だよ、ダイダロスの街の!」
「領主様?」
ガルバから説明を受ける。あの街であった出来事を
そして、領主様とは何者かと言うのを聞いた。
「まさか王政を廃止していたとはね・・それにしてもガルバ!あんたってバカなの?!」
さすがのキャサリンも怒り心頭である
まさかガルバが起こしたトラブルでカンザキが帰ってきていないと思われたからだ
「うわあああ!ご、ごめんよ!俺のせいで!カンザキが帰ったって聞いたからよ!怒って帰ったのかと思ったんだよ!」
あまりのキャサリンの剣幕にガルバは思わず土下座して謝っている
しかし、帰ってきていないカンザキは、
ガルバを責めたってカンザキは帰ってこない
それで帰ってくるのならいくらでもここで怒っていればいい。だけど、それじゃあカンザキはいつ帰ってくるのかわからない。この店はカンザキの家で、城だ。
迎えに行く
カンザキはここに居ないといけないのだから。それが、あの日交わした約束でもあるのだから。
キャサリンは決める
決めたとなれば行動は速攻で始める
「シア!カンザキを迎えに行くよ!準備して!ガルバは……あんたはそこにいな!もし万が一、カンザキと入れ違いになったらあんたがそれをカンザキに伝えるんだ」
そう言うとキャサリンは一度準備をする為にと自分の店に戻る
「姉さま・・ありがとうございます」
シアは姉に感謝する
そしてシアも部屋にもどり準備をする
「キトラ!シルメリア!」
弟子でもある二人を呼ぶ
「なあにーキャサリン」
「・・・呼んだ?」
「カンザキを迎えに行くよ。ダイダロスにね」
キャサリンは二人も連れて行くつもりだ
もちろん戦力として
キトラのうさ耳がぴくんと跳ねる
「えっと……最高でいくの?」
キトラの言う最高とは
最高の装備でと言うことだ
今までキャサリンが収集していた最高の装備
それを持っていくのかとキトラは聞いている
「当たり前ね…、どうやらカンザキが帰ってこれない事態みたいなのよ、ホントに何があるかわからないからね」
キャサリンは着替える
白と赤で彩られたとても美しい鎧を着込んでいく
キャサリンはもしも仮に、ダイダロスの国が相手だとしても引くつもりは無い
そしてキトラとシルメリアも用意する。今扱える最高の装備をして
「ね……キトラ……これでいいかな?」
「うん、着替えももっていこうね!」
わずか数十秒でその用意が完了する
「シア!用意できた?行くよ!!」
焼肉ゴッドの前にはもうキャサリンとキトラ、シルメリアが立っていた
「お姉さま待って下さい!」
シアは慌てて店を出る
「おっと、猫のトコでアイテム揃えて行かなきゃね」
そう言ってキャサリンは猫印アイテムショップへ向かう
「そうね、1時間後に門の前に集合だよ、キトラとシルメリアは馬車用意しといてくれる?」
キャサリンがそう言うと
「らじゃーです」
キトラの耳がピンッと立つ
「了解・・しました」
キトラとシルメリアが敬礼していた
「お姉さま待って~」
シアはキャサリンを追いかけて行った
「あ・・あれ?俺はいつまでここにいればいいんだ?」
ガルバはキャサリンに「万が一」カンザキが帰ってきた時の為に焼肉ゴッドに残されたままになっていた
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