第6話バイトでおうじょ・・風呂?

焼肉ゴッドの二階は、カンザキの自室がある


およそ15畳とのそれなりに広い部屋だ

そこにはカンザキの私物が山のようにおかれてまさに男一人暮らしといった様相である


台所とトイレは一階店内のものを使う


風呂は裏庭に仮設した


仮設といえど、そこは日本人、かなり広々とした露天風呂といった様相を呈している


温水は全て魔石で賄える便利なものである

その湯船はもともと裏庭にあった巨大な岩を切って整えたもの

あとは適当に囲いを作っているだけなのだが


覗こうと思えば簡単にのぞける作りなのだが、男の風呂なんざ見てもしょうがないだろ?という精神で作られた粗末な囲いだったのだが最近問題が発生した


カンザキが入浴していると、時折キャサリンが一緒に入ろうとしてくる。

丁重にお断りしていたのだ


入りたければ、俺がいないときにご自由にどうぞと言ったら、本当に入るようになってしまった

キトラやシルメリアも一緒に入っているようである


それはそれで心配になってしまい、ボロの囲いはカンザキによって、厳重に作り直された


ただの木で作られていた柵は、神樹ともいうべき樹から作りだされた要塞ともいえる防御力を誇る

さらには魔法防衛機構をも備えさせる念の入れようで


結果、覗こうとした愚か者が重傷を負うこともあるのだが、誰も同情はせず、そいつはさらにキャサリンファンの者たちから追い打ちを受ける事になるのだ




主にカンザキが追い打ちをかけるのだが。











先日のドワーフ以降、カンザキの店は話題になって客が増えていた


仕入れと仕込みは問題ないのだが、問題は提供するスピードだ


今まではカンザキ一人で注文を受け、配膳をしていたのだが、だんだんと間に合わなくなってきてしまっている


個人的にはのんびり客の相手をするのも好きだったんだが



本格的にバイトか従業員を雇おうかと思い立つ


とはいえ、この街のハローワークは、所謂冒険者ギルドというやつで、冒険者の派遣等はそこでやってくれるが

こいった飲食店の店員はそうはいかない



そう思って、自前で用意する必要がある


いろいろ考えて従業員募集の貼り紙を作り、貼ったのだ。


「従業員募集!三食昼寝露天風呂付き!希望があれば住込みも可!給与相談応」



店の外にそれをぺたりと貼った俺は満足げにうなずく

上手く書けたんじゃないかなあと


これがあんな事になるとは思いもよらず







そうしていると、常連のクナトの奴がやってきて


「粗相の無いようにお願いしますね」


そう言って黒い燕尾服をひるがえし帰ってしまった

ずいぶんと殺気?みたいなものをまき散らしていたように思うが


相変わらず熊みたいなやつだ


なんだったんだ?と思っていると



「あのぉ…すみません」


唐突に綺麗な女性に声をかけられる

思わずびくっとしてしまった


見た目はそうだな、身長160センチ、ブロンドの長髪、赤色の瞳・・・・なによりも胸が大きい・・そのたわわに実った果実は俺には猛毒にしか見えん


服装はこの界隈では見かけない、上品そうなドレスを着ている


マジでかわいいと思う


キャサリンとはまた違ったこう、色気が・・・

そう思ったところで


「あのぉ…」


「おっとすまない、まだ営業してないんだよ」


店の客かと思い返答するが


「いえ、その…」


スカートの裾を両手でぎゅっとにぎる女性


「ん?違うのか?」


何か他にあるのか?

しばらくそのまま女性の声を待っていると


「こちらで従業員を募集していると聞きまして!ですね、で、雇っていただきたいのです!」


急に元気になった

ちょっと声でかいな


「ああ、従業員を・・・キャサリンの店は隣だけど、あんたじゃちょっと上品すぎるぞ?」


率直な感想を述べる


「いえ、違います!この…焼肉ゴッドで働きたいのです!」


へえ、焼肉ゴッドでねぇ…


ってうちか!


「な、なんでうちに……まぁいいか。可愛いし、採用!」


KAWAIIは正義だ とは誰の言葉だったか 


「あ、ありがとうございます!よろしくお願いいたします。」


そんな訳で、従業員一名様ご案内~





とりあえず、その恰好は目立つしこの店には合わないので、地味な服を適当に用意して渡す


ズボンだがいいだろうな、あと白い半袖、エプロン


ぬうう、胸がでかすぎて服がぱっつんぱっつんだ。なんか考えないといけんか?


メニュー、客への応対のやり方、その他もろもろを教えていくのだが


この娘は驚くほど物覚えがよく1言えば10やってくれる。楽でいい


まぁ今日は平日で客もそう多くはないはずだ。

だから忙しいってことはないから大丈夫かな



と、思っていた時がありました。



いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!

注文は肉盛り合わせと酒でいいですか?

ありがとうございましたー!

ありがとうございましたー!



異常な客数だ


これは何事…

よく見ると客の大半はこの街の王宮の兵士や、街の衛兵達だった


「おい・・・マジでいらっしゃるぞ・・・」


「噂は本当だったのか・・・」


「お美しい・・・」


そんな声が聞こえてくるが、こっちは忙しくてそこまで意識が回らない



途中で食材が付きかけたが、なんとか足りたようだ。明日の仕入れは多めにしておこうと思う


とにかく疲れた


「ふうー」


結わいたブロンドの髪をほどく


「楽しかったです」


彼女はそう言った


ん?彼女?


「そういえば君は名前は、なんて言うんだ?」


「はい、あれ?自己紹介がまだでした。私は アレクシア・ウル・グインと申します。長いので、シアと呼んでやってください。」


へえ、シアね・・・ん?・・・って・・・え・・・?


「ウル・・・・グイン?」


聞いたことがある・・なんてもんじゃないな・・・


「こ、この国の王族がそんな感じの名前だったような・・」


もしかする・・訳はないだろうな?


「はい」


「ええっと、確か……アイエテス・ウル・グインって知ってるか?」


この国の王の名前だ


「はい、父上ですね。ご存知なのですか?」


ちょ、ちょっとまってええええええええええい


父だと、そうするとこの娘は王女ってことになるぞ!いかん、これはやばい


やばいっていうかこきつかったぞ!


「お、おい、その父上は、王はその事を知っているのか!?」


勝手に来てんじゃないだろうな!いや見たこともないからしらんけどな!


「お前の好きにしろと、言われまして。うちって結構自由な家風なんですよ」


自由な家風とか王族が言っていい言葉じゃねえ!


そして、王女様・・・シアはさらに言った


「こちらで住み込みでお願い致したいと、そう思っております。よろしくお願いいたします」


と、まばゆい笑顔でそう言った。







ええええええええええええええええええええええええええええ






巨大都市ウルグイン


焼肉ゴッドに新たな従業員が増えた。


綺麗なブロンドの美女 アレクシア・ウル・グイン 





王族が従業員とか誰得だよ・・・・・いやマジで・・・




「あ、お風呂が裏にあるんですよね?頂いても良いですか?」


なぜ知っているーーー!(貼り紙)

てかマジで入るのか!?住むのか!?何処にだよ!



もうほんと、つっこみで疲れるんだけど。




そんなわけで、なんだか変な事になってきたのであった



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