第4話海は広いな大きいナ

キャサリンは店の二階で数名の孤児を育てている



キャサリンは子供が大好きだった


だから、孤児になった子や、行くあてのない子供を引き取ったりする


里親が見つかれば、喜んで送り出すし

見つからない子供には、生きる術を与えるために、冒険者として生活てきるよう、強く育てる

弓使い見習いのキトラもその1人だ




その日の夜は焼肉ゴットで遅い夜食を食べていた


キャサリンが週に一度だけ、仕事終わりに店のみんなを連れてくる。夜遅くても子供達も連れてくる



その、帰りに女の子の1人がこう言った



「たまにはお魚とかも食べたいなあ」



確かに、巨大都市ウルグインには魚介類が少ない


海までは遠いし、川には魚はいるがかなり高価だからな



よっしゃ、なんか取りに行って来るかー


そう考えているとキャサリンが、


「カンザキありがと」


そう言って帰っていった。

顔に出ていたか、心でも読まれたかな?


俺も子供が好きだからな…だからあの子らの為に何かしてやりたいと、そう思っただけのこと




翌日、朝早くからカンザキは出掛ける用意をして外に出た


すると分かっていたかのようにキャサリンが待っていた


「おはよ、カンザキ♪」



ぐはあっクソ可愛いぜ!

キャサリン可愛い過ぎる!

いつも通り脳内でキャサリンを愛でる



「今日は海に行ってくれるのよね?うちの子の為にありがとう」



そう言って、1人の女の子を連れてきた

昨日、魚が食べたいと言っていた女の子だった



「この子、元は結構海が近いとこに住んでいたようなんだよね。だから、魚が食べたいらしいのよ。獲るのも得意らしくてね。一緒に連れていっちゃくれない?」



ふむ、だがしかしなあダンジョンだし


危険じゃないか?

そう思っていると



「大丈夫よ、キトラ同様仕込んであるから」



そうか、それなら大丈夫かなと思った

キトラは少し臆病だったが、その弓の腕前は一級品だったからな



そうして、カンザキは連れていく事にした




キャサリンもいつか一緒に行ってくれんかな?

そんな淡い期待を抱いてみたりする




第400層



いつものように隠し部屋から転移すると、そこには巨大な海があった


一周が10キロ程度の小さな島

その周りには岩場と言うか、さらに小さな島が点在している。


1キロ程度の小島が沢山ある


その島の一つに二人は居た



「そう言えばお前さん、名前はなんて言うんだ?」


まだ名前を聞いて無かったな


「・・・・シルメリア。今日は・・ありがとう」


シルメリアか、良い名前だな


彼女は緑色の髪のショートカット、160センチくらいの身長で、スレンダーな体つきをしている。

服装は動きやすい物を選んでいる感じだ


スレンダー・・・だなあ。


俺が見ていると彼女は、


「・・・どこ・・見てるの・・」


恥ずかしそうな顔をして両手で胸を隠した


おっと、見すぎたか


「いや、得意な武器はなんだろうと思ってな」


シルメリアとの会話は時間がかかるが、人嫌いってわけじゃなさそうだ。


あと勘も鋭い…



よし、じゃあ行こうか


猫印のアイテムシリーズ

今日は水中でも呼吸可能な、シュノーケルみたいなものだ。

魔石が仕込んであり、それが酸素を生み出すのだ。

それを装備して頭に被る


海に歩いていく途中、何も無い所で


びたん


シルメリアがつまづいてコケた


むくりと起き上がって、パンパンと砂を払うと、急ぐようにして海に向かう。



なるほど、ドジっ子属性か…可愛いな



びたん


あ、また転んだ







俺とシルメリアは海にもぐり、魚を見つけては獲る


さすがに得意と言うだけあって、手馴れたものだった

銛の使い方も手馴れている


数時間経ち、いい加減、大量に獲れたので上がろうとしたその時だった





「キャアア!」


シルメリアの叫び声だ!

どこにいる!?

振り返るとそこには巨大なタコの足に掴まれたシルメリアが吊り下げられていた!


「くそっ!」


カンザキは剣を取り出して駆けた!

俺はまずシルメリアを掴んで離さないタコの足を切り落とすー


飛び上がり横に一閃する


タコの足は音もなく斬れて、力なく落下する



「きゃあ!」



よし、開放されたか!


俺はそそままタコの足を輪切りにしていく


これでもかと輪切りにしていると、波がばしゃばしゃと暴れ始めた



ゴゴゴゴッ


地響きだと!?


まさか・・!


足元を見ると地割れが始まっている


ビシビシと亀裂が入って地面に巨大なクレバスが出来ていく


マズい!


「シルメリア!」


俺は叫んでいた



見回すがそこにシルメリアを見失う

またタコに掴まれたか!?

慌ててタコの足を見ると


1.2.3..くそ、10本もありやがる!

タコなのかイカなのかどっちだよ!

だがシルメリアはいない!


どこだ!慌てて探していると


ヒョイっと首襟を咥えられて急に空に舞い上がる

ふわりとした感覚に背筋が凍る


「な、なんだあ?!」


見るとそこには飛竜・・・いや、小さなドラゴンか!

飛竜とは明らかに違うその体躯は小さいながらとてつもない力を秘めているのを感じる


「くおんー」


ひと鳴きして、そのまま空を飛び回る


なんだか見覚えのあるそのドラゴンー


まさか、



「シルメリアーか?」


「ぐぉ」


ドラゴンは返事をする様に鳴いた


あはははは、なんてこった、シルメリアか!

シルメリアはドラゴニュートってやつか!


ドラゴンに変身する一族。

実在していたんだな、初めて見たよ!




ドラゴンとなったシルメリアは、美しい緑色をしていた。



下を見ると、割れた地面のクレバスの奥に巨大なタコが見えた

それがすうっと、深海へと消えるように沈んで行った。


俺たちの居た島その物が、タコの上だった様だ


ゆっくりと別の島に下りると、シルメリアは木陰に隠れるようにして人型になっていったが


丸見えでした


しかも全裸かよ


俺はシルメリアの荷物を持って、なるべく見ないよう近くに置く


それを受け取り、ゴソゴソとして服を着ているようだ


俺のそばに来ると、


「カンザキ・・見た・・・・でしょ・・・」


顔を真っ赤にしたシルメリアが言った。


見たけどつるぺただったとは言えないので



「いや、海は広いなぁ。あんなデカいやつもいるんだな」


ごまかすように、俺は言った。





その後、俺達はとれた獲物と、タコの足を魔法の袋に入れる


タコ焼きってのもいいなあ。


そんな事を思いながら


焼肉屋に戻ると、キャサリンが待っていた


「よ、おかえり。」


シルメリアはキャサリンを見るなり走って行って



あ、転んだ。


「まったくもう、シルメリア気をつけて?で、どうだった?」


俺には聞こえない声で、キャサリンに話している


「そうかそうか、じゃ、お礼言いなさいよ?」


キャサリンがそう言うと

シルメリアはくるりとこちらを向いて





「あり・・・がとう・・・」







その夜はシーフード焼肉、もちろん普通の肉もあるぜ。


美味そうにシルメリアは魚を食べていた



デカいタコに、ドラゴニュートか


本当にこの世界、まだまだ知らないことが沢山あるな。


それが、なんだが幸せに思えた。








焼肉ゴッド


巨大都市ウルグイン唯一の焼肉屋


そして今日からしばらくはシーフード焼肉もあります



----------




本日の裏メニュー



「クラーケンのたこ焼き」


一パック8個入り


特殊効果は少しだけ水中で息が続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る