第7話 日曜日の午後。サキュバスのおやつ/ごはん
「はぁ~、友達のメッセージ返信遅い~」
「はふぅ、お兄様の部屋でゆっくり……」
日曜日の午後3時。セチアとクロユリが俺の部屋にいるのはいつものことだ。
もうすっかり俺の日常に溶け込んだな、こいつら。
コップに入った牛乳を飲んで、テーブルに上半身を投げ出してのんびりしている2人。我が家か貴様ら。
文字通りに羽を伸ばしてくつろぐ姿は、まるで同居人のようだ。お前ら他人だよね? 家族じゃないよね?
俺は牛乳を飲まない。だってさ、サキュバスが入りびたる日常に牛乳とか、必ず『あの体液』を連想しちゃうじゃん。気分が悪くなるんだよ。
牛乳を冷蔵庫にしょうがなく入れているのは、こいつらが牛乳好きだからである。
……あの体液といえば、こいつらがそれを摂取してるって話は聞いたことが無いな?
恋愛面クソ雑魚だとしても、仮にもサキュバスだろ? どうやって体調を保っているのか気になる。
別に、他の男がいるのか気になっているわけじゃないぞ。単純に興味があるんだ。
「唐突な話だけどさ。そういやお前ら、男のアレとか摂取しなくて大丈夫なのか? そういった話したことないよな?」
「アレ? ああ、アレですね。ミルクで代用しています」
「アタシはいつも高級牛乳を飲んでるね~」
「牛乳で大丈夫なのかよ。どういう原理なんだ?」
昔の言い伝えだと、枕元に牛乳を入れた皿を置いておけば、サキュバスは騙されてそれを持って帰るというものがあった気がする。
おい、それマジで満足してんじゃねぇの? 男を襲う理由は? 栄養価が高いとかそういうものか?
「えっと……それで体もつのか?」
「それっぽい食べ物や飲み物なら、なんか満足します」
「男の人のって美味しいらしいけど、アタシはやっぱり初めのは陸翔のがいいから我慢してるんだよね~」
「『なんか』満足なんだ。テキトーな体してんなオイ」
なんか実験してみたくなったな。
目隠しをして、適当なものをそれっぽく与えたら、脳から快楽物質がいくら出るのかとか研究したくなってくる題材だな。
とろろとかヨーグルトとかを棒状のものに塗り付けて、咥えさせたら満腹感のシグナルが脳から出るのかとか、そういう実験したくなったな。
「じゃあバナナとかでも満足するのか? 冷蔵庫にあるけどいるか?」
「いる~。バナナもすっごく美味しいと感じるんだよね」
「わぁい、いただきますっ。お兄様のバナナ……ふふっ」
悲報、俺は今度からバナナを食べにくくなりました。実験考えなければよかった。
冷蔵庫を開けてバナナを取り出し、房からもいで1本ずつセチアとクロユリに渡す。
皮をむいた途端にバナナをじゅぽじゅぽと口に出し入れするセチア。それに対し、ぺろぺろいやらしく舐めるクロユリ。
第一感想、汚い。うっわ汚い。ガチの搾り取る動きじゃん。俺童貞だけど、ガチのヤッてる時の動きだと一目でわかるよ。
口をすぼめて、金色の瞳で上目遣いでこちらを見るセチア。
時折恥ずかしそうに、セチアと同じ金色の瞳でこちらをちらりとみるクロユリ。
どちらも表情は恍惚としていて、時々はぁ……と生暖かい息を漏らす。
エロいね、食べ物で遊んでなければね。こんな実験やってみようと思った俺が馬鹿でした。
「食べ物で遊ぶ子は嫌いです。割と真面目に」
「やだぁああああああ!」
「やぁあああああああ!」
泣きながらバナナをもぐもぐと食べ始めだす2人。すまん、今回は俺が悪かったよ。
しかし、毎回お前ら簡単なことでメンタルブレイクするよね……。
「お前ら、本当に変なところで台無しにするよな」
実験結果:食べ物を使ってみようというのはやめましょう。
なお、バナナで満腹感が出たせいで、今晩の夕食は2人とも少なめだったという。本当にテキトーな体してんな。
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