第2部
第8章~異世界でも童貞確定した俺が裁判を逆転させるまでのお話~
第66話 どうしてこうなった?
「うわああん! 私は無実だああああああ!!」
とある晴れた日の朝。ウォーター市の中央広場に悲痛な叫び声が響き渡った。
広場の真ん中に処刑台が設置され、そこにそそり立つ丸太に、薄汚れた麻の囚人服を着た一人の少女が荒縄でぎっちぎちに縛りつけられている。
「おい、あれって確か《チェリー&ヴァージン》とかいうパーティーにいたエロい姉ちゃんじゃね?」
「あぁ、インヴィランド軍に向かって単身飛び込んで行ったあいつか!」
「いつも絶対崇高の神がどうの、救国の英雄がどうのって痛いこと言ってたよな」
「かわいそうに、色々とこじらせた結果がこれか……」
「くぅ~、いい身体してんなぁ。どうせ処刑されるならその前にお世話になりてぇぜ」
処刑台をぐるりと取り囲むように人だかりができていて、あちこちでそんな声が聞こえてくる。
その群衆の耳目を集める処刑台に、エロく縛りつけられた金髪碧眼の美少女。そう、それは俺たちパーティーのメンバーであるアナスタシアその人である。
広場での騒ぎを聞いた俺は、慌てて駆けつけてみたらこの有り様というわけだ。
「被告人は、絶対崇高の神に仕えるエックス教の信徒などと虚言を弄して人々を欺き、祖国フリンスに忠誠を誓う救国の英雄などと騙る不届き者である」
厳かな法衣を纏った裁判官と見られる初老の男が、判決文を朗々と読み上げている。
「加えて被告人は、先のインヴィランド軍侵攻の際、こちらから先制攻撃を行うという重大な憲法違反を犯した。よって、ここに被告人を火刑に処するものとする!」
判決文が読み終わるや否や、松明を掲げた刑吏が処刑台に上り始めた。
「いやあああ! 私は本当に絶対崇高の神に仕える敬虔なエックス教徒で、祖国フリンスに忠誠を尽くす救国の英雄なのよおおおおお!!」
アナスタシアは身の潔白を訴えて泣き喚き激しくもがいている。
そして、もがけばもがくほど縛りつけてある荒縄が食い込み、図らずもその巨乳をさらに強調させることになった。
おっと、この絵面はかなりエロいぞ。俺は少しだけ前のめりになる。
……って、呑気にそんなの拝んでいる場合じゃないな。
「いいぞいいぞ~! もっともがけえ~!」
「おい、まだ火をつけるんじゃねえよ! もっと楽しませてくれや!」
「いっそのこと全裸にして縛り直せ!」
処刑台を取り巻く群衆も大いに盛り上がっている様子だ。
「ええい、静まらんか! 何をぐずぐずしている、早く火をつけよ!」
群衆の思わぬ反応に動揺した裁判官は、刑吏に早く火をつけるように促した。
マズい、このままじゃ本当にアナスタシアが火あぶりにされてしまう。
「やだやだやだあああああ! 私はまだ死にたくなあああああい!!」
刑吏がアナスタシアの足元に積まれた藁束に松明の火を近づけようとしたその時――。
「ちょっと待ったあああああ!」
相棒が落ち着いた俺は、群衆を掻き分けて処刑台の前へと躍り出た。
「しゅぐりゅううう! たしゅけてえええええ!!」
アナスタシアは俺を見るなり涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫んだ。
まったく、この女はいつもいつも面倒ばかりかけやがって。
「裁判官、刑の執行は待ってください。彼女は無罪です!」
俺は裁判官を見据えて高らかにそう宣言した。
もちろんそれはただのハッタリで、アナスタシアが無罪だという証拠や、これからどうするか妙案があるわけでもない。
ていうか、そもそも何がどうしてこうなった?
騒動の発端は数日前に遡るのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
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