第58話 知恵と戦いの女神クリス・マキア
「アワブロデイッテ、どうかしたの?」
アワブロデイッテ? それってヴィニ姐さんのことなのか??
「あらぁ~、クリちゃん」
「ぶはぁっ!」
ヴィニ姐さんが声を掛けられた一瞬の隙をついて、俺は神乳から一気に殺人的と化したそのでか乳から逃れた。
「玄関へ行ったきり戻ってこないからどうしたのかと思ったら、そんな事をしてるなんて、あなたって人はまったく……」
「あはは、ごめんねぇ~。あ、そうだ、クリちゃんも一緒にどぉ~お? こぉ~するとぉ~、すっごく気持ちいいのぉ~♡」
ヴィニ姐さんは、再び俺の顔を爆乳の谷底へと押し込んだ。
ちょ、まっ、止めて! あ、やっぱり止めないで!
「止めなさいって。その子、苦しがっているじゃないの」
「むう~。そんなことないもんねぇ~、すぐるん♡ あれぇ~、お顔が真っ赤だよぉ~?」
はい、あなたの爆乳で死にかけたので。
「あはは♡ もしかしてぇ~、あたしに会えて照れてるのかなぁ~? やだぁ~もぉ~、あたしもぉ~照れちゃうじゃなぁ~い♡」
俺はまたしてもヴィニ姐さんの乳に飲み込まれ、今日何度目かの命の危機を感じたのだった。
「ところでぇ~、どうしてぇ~すぐるんがここにいるのぉ~?」
「えっと……、チーパーミーツの配達で注文のピザを届けに来たんですけど」
俺は、チーパーミーツと書かれた配達専用のリュック《チバック》からピザを取り出しながら答えた。
「あぁ~! そういえばぁ~、ピザを頼んでいたんだっけぇ~。すっかり忘れてたぁ~。てへっ♡」
だ、大丈夫か、この人……。
「――それでは、俺はこれで失礼します」
「あらぁ~、もう帰っちゃうのぉ~? そうだ、すぐるんもぉ~ピザを食べていきなよぉ~♡ 今ね、クリちゃんのぉ~お誕生日をお祝いしていたところなのぉ~♡」
そう言いながらヴィニ姐さんが俺の片腕を掴むと、その爆乳で挟み込んだ。
ふぉわぁあ! 一瞬にして相棒が元気になる。
「こら、アワブロデイッテ。そうやってすぐ誰彼構わずに誘惑するのはあなたの悪い癖だっていつも言ってるじゃない」
クリちゃんと呼ばれているもう一人の女性が、呆れた顔をしてたしなめる。その女性をよく見ると、あまりの美しさに俺は思わず息を飲んだ。
深海を思わせる群青色をした髪と、片眼鏡の奥で涼しげに光る灰色の瞳。身体は筋肉質で引き締まっているにも関わらず、バストとヒップはそれに反して豊かな肉付きで、全体として絶妙にエロいバランスとなっている。
おまけに、何故か布面積が小さい透っけ透けな、ランジェリー姿のような出で立ちなのだから、もうそれだけで前のめりになりそうだ。
「むう~、誘惑なんてしてないもん! ねぇ~、すぐるん♡」
あ、いや、童貞男子高生の俺はがっつり心をかき乱されております、はい……。
「ところで、さっきからアワブロデイッテとか呼ばれてますけど、それってヴィニ姐さんの名前なんですか?」
「あぁ~、アワブロデイッテはあたしの本名なのぉ~。それでねぇ~、ヴィニボンヌっていうのは~お店の源氏名なんだぁ~。だからぁ~、あたしのことは~そっちの方で呼んで欲しいなぁ~♡」
あぁ、そういうことなのか。ていうか、ヴィニボンヌっていう源氏名も源氏名だけど、本名のアワブロデイッテっていうのも何だかすごい名前だな。
「あぁ~、そぉそぉ~。二人とも紹介がまだだったわねぇ~。まずぅ~、こっちの彼はぁ~すぐるん!」
「あ、ど、どうも、スグルっていいます」
俺は、照れ隠しで視線を逸らしながら軽く会釈をする。
「それでぇ~、こっちがぁ~クリちゃん♡ 彼女はぁ~あたしのお友達なのぉ~♡」
「だから、その呼び方は止めてって言ってるでしょう」
クリちゃんと呼ばれた女性はため息混じりにそう答えた。
「……まったく。どうも、私の名前はクリス・マキアよ。よろしく。」
クリス・マキア!? そういや、ギガセクスの娘がマキアっていう名前だったよな?
あのおっさんが言うには、マキアって娘は槍と盾で重武装しているということだった。でも目の前の女性は、それはもうえちえちなランジェリー姿だ。
ま、まさかな……。
ふと俺は、彼女の背後のリビングと思しき部屋に目をやる。すると、穂先がえっぐい形状をした槍や、魔物か何かの意匠が施されたごっつい盾、ド派手な前立ての付いた兜に、銀色に輝く胸当てといった武具が転がっているじゃないですか。
あれらをフル装備すると重武装ってことになるよね?
「あ、あの……。あなたはもしかして、あのおっさん……あ、いや、全恥全能の神ギガセクスの娘で、知恵と戦いを司る女神のマキアですか?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「ええ、そうだけど。でも、どうしてそのことを?」
おぉ、やっぱりそうだったのか。ついに、あのおっさんの二人目の娘を見つけたぞ!
何故マキアという名前の前にクリスと付いているのか気になるところだが、その疑問についてはひとまず置いておこう。
「あらぁ~、すぐるんは~クリちゃんのこと知ってたのぉ~?」
俺は二人に、この世界に来た経緯をかいつまんで説明した。ギガセクスからの依頼の件を除いて。
「そんなことがあったのねぇ~。彼女との初めてのデートでぇ~、童貞を卒業するはずだったのにぃ~。可哀想なすぐるん……」
ヴィニ姐さんは、目を潤ませてぎゅっと俺を抱きしめた。さっきまでは殺人的だったはずの乳が、今はとても柔らかく慈悲深いものに感じられる。
「そう、事情はだいたい分かったわ。でもあの父がわざわざこの世界へ君を転生させたのには何か理由があるのでしょう?」
クリス・マキアは、その切れのある目の片方をやや細めて、怪訝な面持ちで尋ねた。さすがは知性を司る女神だけあって、何か裏があると敏感に察したようだった。
どうする、彼女にギガセクスからの依頼の件を正直に打ち明けるか?
いやいや。依頼や魔法の事を話したところで、どうせドン引きされるに決まっている。
ならいっそ、いきなり魔法をかけてしまうっていうのはどうだろう?
だが魔法をかけるために突然詠唱を始めたら、攻撃を仕掛けてきたって勘違いされるんじゃないか。
確かクリス・マキアは神界きっての武闘派だとも言っていたな。もしも戦闘になったら、クソ雑魚の俺なんか絶対に敵いっこない。
ど、どうする……。
俺はあれこれ思案を巡らせ答えに窮していると、クリス・マキアが片眼鏡の奥で灰色の瞳を妖しく光らせた。
「スグル君、といったかしら? ねぇ、私とセックスしましょう」
「はい?」
俺は一瞬、言葉の意味を理解できずに聞き返した。
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【あとがき】
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