第53話 ひとりで♡

 俺は今、我慢の限界に達している。


 それは、ことあるごとに純潔を喪失するアナスタシアのポンコツっぷりにではない。


 ギャルのくせに腐っていて、いつも俺を蔑むアルティナの態度にでもない。


 何かにつけて、婚姻届にサインさせようとするエスタはついては、我慢の限界というよりもひたすらに鬱陶しい。


 では、一体何が限界なのかって?


 そりゃ、健全な高二男子が我慢の限界に達しているといったら、しかないでしょうが!


 単刀直入に言おう。俺は今、すっごく溜まっていると。


 こっちの世界へ飛ばされてきてから何だかんだ一ヶ月余り。その間、まだ一回も発散してない。普通の男子高生なら発狂しちゃうでしょう、これ。


 ぶっちゃけ、今の俺は女の子に囲まれた生活を送っていて、一見するとそれは、異世界転生モノのラノベやアニメによくあるハーレム状態のようではある。


 けれど、現実はそんなに甘いもんじゃない。俺の周りにいる女は、揃いも揃って問題のある奴ばかりだ。


 そして俺は、あの魔法を使うために、この世界でも童貞でいなければならないときている。


 童貞を卒業できないのら、せめて一人でやればいいじゃな~いと言うかもしれないが、はそんなに簡単ではない。


 俺はエスタの家で個室を割り当ててもらっているのだが、鍵などは付いていないため、いつ誰が入ってくるかわからない。


 実際エスタなどは、用もないのに頻繁に俺の部屋にやってくる。しかも、ノックもなしにだ。


 こんな状況では、おちおちパンツも下ろせやしないんだよう!


 とはいえ、やはり背に腹は代えられない。意を決した俺は、ベッドに潜り込んでベルトを緩めると、パンツごとズボンを下ろした。


 だがここで、一つの大きな問題があることに気付く。オカズガない……。


 そうだ、こんな時のためのパイフォンじゃないか!


 この世界にも、エロい画像や動画がきっとあるはずだ。うん、そうに違いない!


 俺はパイフォンを取り出すと、さっそくエロ画像、エロ動画をあさり出す。


 うっほ、あるある!


 一糸纏わぬケモ耳女子の画像や、エルフのお姉さんのあられもない姿などなど、出てくる出てくる。こういうところはさすが異世界ならではってやつだな。


 ――ペコッ。


 ん? あ、あれ??


『このたびはアダルトサイト《エチハブ》へご入会いただきましてありがとうございます。つきましては入会日より7日以内に指定の口座へご利用料金3000フリンをお振込みください。なお、期日までにお振込みいただけない場合には……』


 何やら変なメッセージが出てきて画面が固まってしまった。


 ちょ、えっ、何これ? やっべ、これ契約しちゃったの??


 くそっ、戻るを押しても戻らないし!


 ど、どうすんの? ねぇ、どうしたらいいの、これ??


 あぁ、もうこれしかない!


 ――ピッ。


 パイフォンの電源をオフにした。


 ふう……。俺は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


 オカズがないとなると、どうする? ここは潔く諦めるか……。否、やるのだ!


 オカズガなければ想像すればいいじゃなーい!


 そんなわけで、俺は身近なところで想像することにした。


 まずはアルティナだ。すらりと伸びた筋肉質の手足に褐色気味の健康的な肌は、文句のつけようがないほどいい身体をしている。


 胸の大きさも、その引き締まった身体つきには最適なCカップあたりだろう。


 そして、俺が元いた学校の制服をギャル風に着こなし、スカートなんかは膝上40センチくらいもあって、もはやパンツを隠そうとすらしていないようである。


 時々目に飛び込んでくるおパンツを想像して、ムラムラした気分になったのも束の間。あいつのムカつく言動の数々を思い出して一気に萎えた。


 よし、次はアルティナのニンフだったカリントーにしよう。


 森で出会った時は、だぼっとしたコアラの着ぐるみを着ていたため、その身体つきはよく分からなかった。あの小柄な身体だと、恐らく胸もそんなに大きくはないのだろう。


 だがしかし、カリントーにはそれを補って余りある小動物的な可愛さがある。それに加えて、ジト目で脱力系というところも鉄板だ。


 けれど、あいつはもう純潔しょじょではないんだよなぁ。ギガセクスのおっさんと、着ぐるみ姿であんなことやこんなことを……。


 くそぉ! 考えたら腹が立ってきて、ムラムラするどころではなくなった。


 気を取り直して、今度はアナスタシアを想像してみることにした。


 思えばこっちの世界に飛ばされて、最初に遭遇したのがあいつのレ○プ現場だったんだよな。


 着ていた鎧ははぎ取られ、乱れた衣服の間から覗く肉付きのいい、透き通るような白い肌が今も目に焼き付いている。


 そして、オトナノガングダケを余裕で挟み込んでしまう肉感溢れる豊満な胸。身体つきのエロさでいったら、俺たちパーティーの中ではダントツだ。


 けれど、痛くて面倒臭くてポンコツで、性格には著しい難がある。それを考えると、元気になりかけていた相棒も一気にしゅんとした。


 そうなると、後はエスタだが……。


 見た目は小学○年生くらいなのに、年齢は140億歳という究極のロリババア。身体つきも見事なまでにつるんと、そしてぺたっとしている。


 ……うん、ないない。こいつはないな。こんなのに欲情したら、それこそコンプライアンス的に色々とマズい。


 やっぱりここは思い浮かべるとしたら、元の世界で俺の彼女だった由依ちゃんしかいない。


 長く伸びた黒い髪に、潤いを帯びた黒曜石のように光る大きな瞳。


 そして、細身な身体つきとは裏腹に、制服の上からでもGカップはあると容易に想像がつく大きなおっぱい。


 俺はあの日、そんな由依ちゃんのおっぱいを、生まれたままの姿を見ることができるはずだったんだ。


 由依ちゃん……。


 準備が整った相棒を握る手を、ゆっくりと動かし始めたその時――。


「おい、旦那様よ、夕飯の準備ができたぞ!」


 エスタがノックもなしに、勢いよくドアを開けて部屋の中に入ってきた。


 ちょ、おい! なんていうタイミングで入ってくるんだよ!


「ん? 布団の中で何をもぞもぞしておるのじゃ」


 ヤバいヤバいヤバいヤバい!


 慌ててズボンを上げようとするものの、焦ってうまくいかない。


「旦那様よ、どこか具合でも悪いのか?」


 エスタが勢いよく布団をめくり上げた。


 …………。

 

 ……………………。


「ゆ、夕飯ができておるから、冷めないうちにの……」


 そう言って、エスタはそっと布団を掛け直した。


 だあああああああああああああああ!


 母ちゃんにだって見られたことないのにっ!


 もう嫌だ。童貞のままでいいから元の世界へ帰りたい……。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】

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