第48話 衝撃の事実
「――それで。アルティナに仕えていて、趣味友っていうくらいに仲がいいはずのお前が、どうしてこんな森の中に一人でいるんだ? しかも、そんな熊の着ぐるみ姿で」
「だから、熊じゃありません。コアラです」
「どっちでもいいわ!」
カリントーは少し沈黙した後、重い口を開いた。
「じつは私……、
「何……だと!?」
マジかよ。こんな可愛い顔して、もう純潔じゃないっていうのか?
一体誰だよ、こんな可愛い子の純潔を奪った羨ま……、不届き者は!
「……ふむ。その相手というのは、やはり
これまで渋い顔をして話を聞いていたエスタが口を開いた。
カリントーは無言のままこくりと頷く。
えっ、彼奴って誰のことだ?
「まったく、あの弟ときたら……」
エスタが大きなため息をついた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 弟って、まさか……!?」
「うむ。我の弟、ギガセクスのことじゃよ」
えええええええええええええっ!
「待て待て待て! ギガセクスとヤった……あ、いやその……、そういう関係になったってことなのか?」
「はい、そうです。私はギガセクス様、いえ、ぎーたんとセックスしました」
カリントーは眉ひとつ動かざずに真顔で答えた。
「ぎーたんとセックス?」
あのおっさんのことをそう呼んでいるのか。ていうかあのおっさん、俺には童貞を強要しておきながら、自分はこんなにも可愛い女の子と!?
ぐぬぬぬぬぬ、許すまじ!
「あのおっさん、一体何考えてるんだよ! これは事案だぞ、事案! おいおい、この世界の警察何やってんだ? ちゃんと仕事しろよ! 何なら俺が訴えて……」
そう叫んだ瞬間、俺の首筋に何か冷たい感覚が走った。
えっ!?
よく見ると、すぐ目の前にカリントーが迫っていて、鈍く光る鋭利なナイフを俺の首に突き付けているじゃないか!
「ぎーたんのこと、悪く言ったら殺すよ。マジで」
赤いハイライトが不気味に光るジト目に、背筋が凍りつくような殺意が込められている。そして首筋にチクッとした痛みが走った。
ヤ、ヤバい。こいつ、ガチだわ……。
「おっと、それ以上ナイフに力を込めたら、お主の存在を未来永劫、時空の彼方へと消し去ってもよいのだぞ」
カリントーの背後でエスタが片手を突き出し、その先にはいくつも重なって回転するド派手な魔法陣と、プラズマを帯びた何とも禍々しい黒い球体が浮かび上がっている。
ちょ、エスタさん。この位置関係でそれをぶっ放したら、カリントーだけじゃなく俺まで消滅しちゃいそうなんですけど。むしろ、そんなヤバめな魔法があるのなら、湖賊との戦いの時に使えっての!
カリントーは目を閉じて短く息を吐くと、俺の首に突き立てていたナイフをすっと下ろした。
「ふ、ふう……」
マジで殺されるかと思った……。
――っつ。首筋を撫でた指先を見ると血が滲んでいた。
エスタもふんっと鼻を鳴らして魔法の構えを解く。
それにしても、まだ中○くらいにしか見えない女の子に手を出すなんて。本当に正真正銘のクズだな、あのおっさん……。
「な、なぁ。そもそも、お前って歳はいくつなんだ?」
俺は首筋をハンカチで拭いながらカリントーに尋ねた。
「……私は15億歳です。それが何か?」
カリントーはムスッとした顔で答えた。
「じゅ、15億歳!?」
あぁ、そうか。こいつもエスタみたいに神様的なアレだから、年齢が人間とは桁違いというわけか。
「何だ、お前も見た目は若いけど、中身はロリババアみたいなものなんだな」
「ロリババアじゃないです」
「ロリババア言うな!」
エスタとカリントーが同時に反論した。
「――とにかく、話を戻そう」
俺はカリントーに話の続きを促した。
「私とぎーたんがそういう仲になったことはすぐにアルティナ様の知るところとなり、激怒したアルティナ様は私を弓矢で射殺そうとしました。それを見かねたぎーたんが、私にコアラの着ぐるみを着せてこの森へと匿ったのです」
おいおい、自分の従者を射殺そうとするだなんて、そのアルティナってかなりヤバい奴なんじゃないのか。
「匿うのはいいとして、何でコアラの着ぐるみなんだ?」
「何でって、それはぎーたんの好みだからです」
そんな理由なのかよっ!
「この着ぐるみでプレイするとぎーたんは萌えるんです。ここにはファスナーがあって、いつもセックスする時はここをこうして……」
カリントーは、背中にあるファスナーへ手を回し下ろして見せた。
「ちょ、待て! そんなこと聞いてないし、いちいちして見せるな!」
と言いつつ、カリントーの着ぐるみプレイをちょっと想像して前のめりになる。
その瞬間――。
バシュ!
耳元で空気を引き裂くような鋭い音がした。ふと見ると、目の前の地面に金色に輝く矢が突き刺さっている。
「えっ!?」
その後も、次々と空気を裂く音とともに何本もの矢が地面に突き刺さった。
ちょ、何だか俺に目がけて飛んできている気がするのだが!
「こ、これは……」
地面に突き刺さったいくつもの矢を見たエスタとカリントーの顔に戦慄が走る。
「だ、旦那様よ、気を付けるのじゃ!」
エスタがそう叫んだ瞬間、矢が俺の頬を掠めていった。頬から血が滴る生温かい感覚がする。
「カリントーから離れろっ!」
声がした方を振り向くと、仰々しい形状をした弓を大きく引き絞る女の子が立っていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
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