第6章~異世界でも童貞確定した俺がムカつくギャルと出会うまでのお話~
第40話 納得いかない職業変更(ジョブチェンジ)
ワース湖での戦いを終えた俺たちは、後処理もそこそこにウォーターへ戻って来た。
「おい、聞いたぜ兄ちゃん。ワース湖で大暴れしたっていうじゃないか」
「あの荒くれ者の湖賊の奴らをどうやって退治したんだ?」
「すごいな、あんたら! ウォーターの誇りだぜ!」
俺たちパーティーがワース湖でメートウ率いる湖賊をやっつけたという話は、すでにウォーター市の街中に広まっていた。
「おい、スグル! みんなが私たちのことをまるで英雄のように噂しているではないか!」
「はいはい、そうですね」
アナスタシアは自分のことを救国の英雄と思い込んでいるだけに、街の人々の噂に目を輝かせてはしゃいでいる。
けれど、俺の気分は頗る重い。ボンクエカードを取り出して、浮かび上がったウインドウを見てうなだれる。
先日の湖賊との戦いで、俺のレベルは一気に10へとアップした。うん、それはいい。じつはそれとともにジョブチェンジも果たしていたわけなのだが……。
《童貞提督》
これが俺の新しい
何だよ、この童貞提督って。ネーミングに思いっきり悪意を感じるのだが。そりゃまぁ、調子に乗って東郷提督の真似をしたけれど。だからって、童貞提督はないだろう……。
「ぷっ、童貞提督って、貴様にはお似合いの職業ではないか」
アナスタシアが、浮かび上がる俺のウインドウを覗き見て小馬鹿にしてきた。
「うっさい! そういうお前の職業はどうなんだよ。何か変わってないのか?」
「私か? 私は貴様とは違って、この前の戦いで救国の英雄へとジョブチェンジを果たしているに決まっているだろう。ほらこの通り……」
アナスタシアが取り出したボンクエカードにウインドウが浮かび上がる。
《ゲロイン》
職業欄にはそう記されていた。
「な、なな、何だこれはああああああああ!」
まぁ、あれだけ何度もゲロったんだから別に間違ってはいない。思い出しただけでも、また酸っぱいものが込み上げてきそうだ。とは言え、さすがにこれは可哀想な気がしてからかう気も失せる。
戦慄くアナスタシアに、俺は生温かい同情の目を向けてやった。湖賊との戦いでの勝利はアナスタシアのおかげということもあるからな。
その証拠に、こいつのレベルを見てみると、一気に15へと上がっていた。俺よりもレベルが高いのが何か地味にムカつく。
そういや、エスタはどうなったのだろう。
「おい、エスタ。お前の職業はどうなってんだ?」
「ん? 我はそのようなことに興味はない。レベルはカンストしておるし、職業も我の心の中ではスグルの嫁じゃからの」
そう言って、エスタが面倒くさそうにボンクエカードを取り出した。浮かび上がったウインドウを見てみると――。
《スク水BBA》
……これはひどい。
「旦那様よ。このBBAとは一体何のことなのじゃ?」
「えっ? あ、いや、それはその……。ビッグでビューティなエンジェルの略だと思うぞ」
俺はエスタの問いかけに、慌てて思いついた単語を並べ立てた。本当はババァだなんて言ったら面倒なことになるからな。それよりも、スク水にはつっこまないのかよ。
「ふ~ん、そうなのか。つまらん呼び方じゃの」
エスタはどうでもいいといった風にそっぽを向いた。
「ん? スグル、BBAとはババァという意味ではないのか?」
「ちょ、おい、アナスタシア!」
どうにか誤魔化せたと思ったのに、何本当のこと言っちゃってんの!
「何じゃと!? 我はババァではないわ! ババァの前にロリを付けんか!」
エスタはボンクエカードを地面に叩きつけた。
えっ? ロリババァならいいのかよ。俺がそう言うとキレるくせに……。
「――とにかく。ジョブチェンジへのクレームも含めてボンクエに行くぞ」
俺は叩きつけられたカードを拾い上げると、埃を払ってエスタに手渡した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
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