第5話:歪みきった男女
突然、後ろから何か物凄い勢いで向かって来る。
振り返るとミッチーがすぐ後ろにまで来ていた。ウサギは急いで、走ろうとしたが捕まってしまった。その瞬間ウサギはつかまれた衝撃で傷が開き気絶した。ミッチーは、そのままウサギを抱えて横にあった少し高いフェンスを登り走って逃げる。
警官の一人がすぐにミッチーのあとを追った。ミッチーは、左手が血まみれになりながらも、全速力で逃げる。
途中で、路肩駐車していた車の車体を使い上手く追跡を撒いた。
_____
目が覚めた時、ウサギは夕暮れ時の学校の屋上に居た。
(うう~ここは‥‥、 まさか!)
辺りを見渡すと、金網からグランドを眺めるミッチーが居た。ミッチーはウサギが起きたことに気がついたのか振り返って話しかけてきた。
「やあ、やっと目を覚ましたみたいだね。ここはもう分かっているかも知れないが、ここはちょうど数週間前に卒業した僕たちの高校だよ。ウサギさん、いや‥‥、 マリアさん。」
そのときマリアに衝撃が走る。
(な、なんで私だと気づいてるの)
「何故気づいたの? と思っているだろう?その理由は、君についている星形のアザと複数のアザだ。もちろんそれだけでは無い。マリアが人参を嫌いなことは知っていた。そしておかしな話、ウサギが人参を嫌う。こんな事が普通あるか?」
ミッチーはこちらに歩きながら続きを言い始めた。
「そう、君が家に来て疑念から確信に変わったよ」
ミッチーは突然立ち止まり、話を続けた。
「そして、今伝えようと思う。高一の時からマリアのこと好きだった。君の趣味、好物、嫌いな物そして君のアザの形までも全て分かっているのに!」
(普通にめっちゃキモいんですけど)
「もちろん君の家族関係まで知っている。虐待にあってたり、父親のアルコール中毒など、知っているさ!」
(気づいているなら、なんで教室で話しかけてこないの?)
ミッチーは、悔しがりながら言う。
「僕がコミュ障で無ければ、うぅ~」
(それで話しかけなかったの三年間も!? 話にならんわ、帰れ!)
その時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。次第に大きくなっていった。
「ずっと好きだったのに‥‥こんなにも愛してたけど、君は振り向いてくれなかった!」
(話して来なかったくせに何言ってるのこの人? マジ、キモい!)
そう言うと、ミッチーは夕焼けで赤く燃え上がる空を見上げた。しばらくすると、
「へへ、へへへぇ。 ハッハハァ!」
ミッチーはポケットから小型ナイフを取りだし狂ったように笑いながらマリアに向かって走った。
「もう僕は逃げられない!それなら、今度こそ君を殺して僕も死んでやる!」
(こうなったやるしかない、一発勝負‥‥はずしたら、 死ぬ!)
マリアは、ミッチーの反対方向に全速力で向かう。
「逃がさないよ!ここで君も僕もGAME OVERだぁぁ!!」
端まで来たマリアは立ち止まった。
ミッチーは笑いながら
「へへへぇ、諦めたのかい?なら死ねぇ!」
ミッチーがナイフで刺そうとした 瞬間、マリアは振り返りナイフをかわし、走ってミッチーの股を潜り抜けて立ち止まり足に力を溜める。
そして、溜まった力でミッチーに向けて飛び蹴りをかました。
(最後に死ぬのはあなただけよ!!)
「何処に逃げるつもりだ‥ぐうぇ!」
飛び蹴りは、ミッチーの顔面にめり込みミッチーは、吹っ飛ばされた。
「ば、馬鹿なぁ!」
ミッチーはフェンスまで吹っ飛んだが、フェンスを固定していたナックルが耐えれず、外れそのままフェンスごと屋上から下に落ちていた。
「このクソがァァァ! アァァァ!」
マリアは、階段に向かってゆっくり歩みだし紅の空を見上げた。
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