第二十四話
翌日わたしは帝都の外れにある、とある小さな斎所を訪れていた。ここへ行ってお尋ねなさい、と教授に言われたもので。
「なんか、おいしいものとか売ってませんかね」
「この辺りは死者の鎮魂に捧げられた霊域よ。そういう場所ではないわ」
「はぁい」
ルービィは相変わらず元気いっぱいである。ルービィにはあまり関係のない用事ではあるのだが、まあ少しは運動させた方がお腹の子のためには良いらしいし。もう一つ言っておくと、我々の政治的立場がいかに危ういとは言ってもおちおち外も出歩かせられないというほどの状況ではない。少なくとも現時点では。
さて。教授の言っていた場所は多分このあたりだと思うのだが……と思ったところで、一人の巫女さんがお祈りをしていた。泣き腫らした目。やつれた頬。髪や耳が深く覆われる装束。まあ、そういう場所柄だからこういう人は珍しくはない。
「すみません。人を探しているのですが」
巫女さんが無言でこっちを見た。
「グランディフロラというエルフの女性をご存知ありませんか? だいたいわたしと同じような顔をしているのですが――」
なおも返事がない。しかしこちらを凝視している。変な人だな。
「レティ様」
ルービィがちょいちょいとわたしの服の裾を引っ張った。
「なに?」
「お気づきにならないのですか? グランディ様ですよ」
「ん? どういうこと?」
「だから、そこにいらっしゃるその方が……局長閣下です」
巫女さんがようやく口を開いた。
「イリス」
わたしはあんぐりと口を開けた。
「……局長?」
巫女さんが小さく頷いた。
これが? この憔悴しきった弱々しいひとりの女が、あのわたしの母、グランディフロラ・キトルスであると?
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