第2話
「スカトロニウスのガキは何処に行った!?」
スカトロ王朝に牙を向けた叛乱軍は城の制圧を終え、残党処理に追われていた。
スカトロニウス三世に槍を突き立てるも、その子供スカトロニウス四世が見当たらない。
「こっちだ!隠し通路が見つかった。」
仲間が叫んだ。確かにそこには隠し通路があった。
「便所に隠し通路とはな。」
「お似合いだな。」
仲間と合流し先へと進む。逃がすつもりは無い。俺達は武器を構えて歩き出した。
仄暗い狭い道を松明の光が照らす。わずかに見える人の面影。スカトロニウス四世が1人で待ち構えていた。
褌のような前掛けと腰に据えた鞘に納まった剣のみの服装。正統なるスカトロ王家の姿はスカトロニウス四世で有ることを示している。しかし、これだけならば影武者の可能性がある。
「スカトロニウス四世か?」
俺は奴に問うた。
「これが何か見えるか?」
スカトロニウス四世は、手に王冠を握っていた。とぐろを巻いた龍の王冠。鈍い茶色の色彩が僅かに光る。
「これはやるよ。」
と、王冠を放り投げた。スカトロニウス四世は剣の柄を握る。
「儂がいく。」
棍棒を掲げて前に出るは百戦錬磨のゴウレスだ。この時代、製鉄技術は希少な物であった。故に、主な武器は硬い樫の木を加工した棍棒、石器、弓矢等だ。
チン!
と、鉄が鳴る音がした。スカトロニウス四世は剣を鞘に納める。棍棒を握っていたゴウレスの手が切られていた。
「チンダス・オーガズムか。」
「王家秘伝のこの剣技を見れるのだ。感謝しながら死んでいけ。」
スカトロニウス四世は、また柄を握る。居合斬りに似たその剣術はスカトロ王朝に伝わるものだ。
ウンダス文明において人々は服を着なかった。故に、一つの規範が生まれた。男児勃起見せる事ならず。それは普段の生活のみならず、男の矜持として同衾の際にも勃起したそれを見せてはならない、とされていた。王家を継ぐ者であるのならば、情時も相手が気がつかぬ間に終わると言われている。
これに因んだ王家秘伝の剣技をチンダス・オーガズムという。鞘に納めたまま刀身をみせないそれは正にウンダス文明の矜持そのものだ。
剣闘士バンダムが前を行く。戦場を無手でいく豪傑だ。最短距離でいく最速の拳は、近接戦闘では無類の強さをほこった。
チン!
と、鉄が鳴る。
「チンダスの露払いには多過ぎるな。」
王剣チンダスはバンダムの拳を斬り落としていた。
膠着状態が続く。前に出れば王剣チンダスの汁となる。しかし、スカトロニウス四世も逃げる事はできないだろう。狭い一本道の穴蔵だからこそチンダス・オーガズムは活きるのだ。地の利を失えば為す術もない。
「睨み合っていてもつまらんな。」
斬り合う事、数刻。スカトロニウス四世はそう呟いて通路の奥へと逃げて行く。俺達もそれについていった。
広く開けた部屋に出た。俺達はスカトロニウス四世を囲む為に徐々に広がっていく。
「乳首は立っているか?」
スカトロニウス四世が刀身を抜きながら語りかけてきた。王剣チンダスには白く濁った液体がまとわりついていた。
「チンダス・オーガズムについて話してやろう。この白く濁った液体は毒だ。赤ん坊に蜂蜜を飲ませて糞をさせる。それを濾して時間がたつとこのように白く濁った液体となる。」
俺達は先の通路での戦闘で切り傷を負っていた。多くは皮膚を裂かれただけで致命傷とはいえないものばかりであるが、スカトロニウス四世の狙いはそれだったのだろう。
「もう一度聞く。乳首は立っているか?」
革製の胸板をしている俺達に今すぐ乳首を確認する手段はない。仮に今ここで脱いだとしたら、王剣チンダスの餌食になることは目に見えている。
目眩がする。吐き気がする。身体が火照り熱をもつ。
不味い。士気が下がる。まだ囲み終えていない。スカトロニウス四世の背後には外へと続く道が見える。奴はジリジリと下がりながら道を背にし包囲から逃れようとしていた。
兵士の一人が槍を突き刺す。焦って出した槍は単純な軌道を描く。スカトロニウス四世は槍を掴み兵士を引き寄せ斬り伏せた。
焦りは兵に伝播した。道の奥へと引いたスカトロニウスを追いかける兵士達。その場で鎧を脱ぎだす兵士もいる。
チン!チン!
と、鉄が鳴る音が響く。スカトロニウス四世を追った兵士達は斬り伏せられているのだろう。俺も覚悟を決めて奴を追うことにした。
追撃した兵は全て倒されていた。その死体を踏み前へと進む。
「乳首は立っているか?」
スカトロニウス四世はまた問うてきた。俺は槍を構えて奴を睨む。
チン!
と、鉄が鳴る。チンダスの白く濁った液体が顔へとかかった。
スカトロニウス四世は逃げて行く。俺は追いかける事は出来なかった。熱と目眩で立っているだけで精一杯な状態だ。力尽きその場に座り込む。
俺は最後の力を振り絞り鎧を脱ぎ半裸になった。乳首は見事に立っていた。
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