第1話 異世界での起床
朝、明かりが窓から差し込み、カーテンの白いレースが涼やかな風を運んでいる。
「マリー様、朝でございますよ」
聞きなれぬ女性の声で目が覚める。
「?!」
がばっとベッドから飛び起きた。
見慣れない広い部屋と、ピンク色と金の豪奢な部屋。中世のロココっぽい。
ここはいったいどこ?私の部屋はいったい?
ふと近くの鏡を見る。
腰までのの金髪の巻き毛に青い瞳。色白の肌に桃色の頬の可憐な令嬢がそこにいた。
誰だこれ?
は。ま、まさか、これは噂の異世界転生?!
驚いて、なにも話さない香織にそのまま侍女が告げる。
「マリー様、今日は午後から両家のお顔合わせのお茶会がございますので、準備に忙しくなります。はやく朝のご支度をなさいましょう」
動じない様子をみると、いつも淡々とこんな感じなのだろう。
顔合わせ?
「もしかしてお忘れですか?今日は婚約者様との婚約式の打ち合わせの日ですよ」
いたのか、婚約者。前世では彼氏すらいなかったのに。
「あー、、わたしの婚約者の名前ってなんだっけ?寝ぼけて忘れちゃった。てへ」
「マリー様?!熱があるんですか?!」
侍女がマリーのおでこに手を当てる。
「いや、熱はないんだけど、記憶がところどころ飛んじゃって…」
「マリー様!!」
このあと慣れない支度をしながら、例の侍女のアリスが言うには、マリーはこんな感じだ。
この体のマリー・ダンテスは、伯爵家の長女で病弱で儚くおとなしい性格の令嬢、だったらしい。一人で読書や散歩が好きな少女で、14歳にして友達もいない。
同い年のレオン・ラファイエットは侯爵家の次男でマリーに反して、勉強嫌いのわんぱく坊主で乗馬や狩りがお好き。
両家は仲が良く交流もあり、ダンテス家が女子しか生まれず跡取りがいないことより、ラファイエット家は長男が跡取りになる為、次男が婿になればちょうど良いのでは?との話で両家の縁組がまとまったらしい。貴族って…。
別の侍女が部屋に案内にきた。
「伯爵様と伯爵夫人が朝食をお待ちです。」
朝食会場に連れていかれる。
扉を開けると、伯爵の父と伯爵夫人の母らしき人ともう一人女の子が座っていた。
どうやら先ほど聞いた妹のシャルロット(10歳)らしい。これまた金髪の巻き毛が愛くるしい。
「マリー、いよいよ今日が来たわね。楽しみでしょう。
婚約者のレオンとも会うのも久しぶりですものね」
伯爵夫人が艶然と微笑む。娘の結婚が楽しみで仕方がないようだ。
当の本人は顔も知らなければ、家の状況もわからず全くついてってません・・・。
そら、思春期の女子しかりいずれは結婚したいなあ、きゃ。みたいなことは思っていたけど、リアルにもう相手がいて結婚が決まっているとは。
マリーははあ、と気のない返事をする。久しぶりもなにも初めてです。
「まあ、マリー。緊張しているの?今日はまだお披露目のお茶会ですからね。
楽しく過ごしましょうね。」
と夫人はうきうきしている。
「シャルロットも楽しみです。お姉さまはどんな装いをされるのですか?
お揃いがいいです」と、シャルロットもはしゃいで可愛いことを言う。
当の伯爵はというと。
「まだお披露目だからな。婿に来ていただくとはいえ、向こうは侯爵家だから格上になるので丁重におもてなしを致すように」
もっともな発言だ。
「侍女が言うには、マリー、体調が良くないみたいだから早めにお開きにしましょうか」母親らしく夫人が心配してくれた。
体調が良くないというか、別人が異世界転生してしまってるんですが・・・。
ふと、いつもだったら、この後学校行って勉強したり、準とたわいもないことで言い争っていたな。懐かしい。いまはとても遠く感じるなと思った。
全然気乗りのしない朝食をそんな感じで終えた。
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