二軒隣の奥様

milly@酒

プロローグ

 新庄唯しんじょうゆいには新しく友達ができた。

 分譲マンションの14階、唯の二軒隣のご夫婦で、非常に感じが良かった。妻の名前は片岡夏樹かたおかなつきという。


 唯は妊娠5カ月でお腹も目立ち始めた。まだ仕事をしていたので、多少の荷物は職場に持って行かないといけなかった。自宅から駅まで荷物を持ってゆっくりと歩いていると、夏樹が荷物を持ってくれた。

 

 「いつもありがとうございます」


 唯は夏樹に会釈をした。


 「気にしないでくださいね。私の職場の場合は、妊娠8週になるとドクターストップが出るんですよ。唯さんは?」


 「妊娠8カ月で産休です。何事も起こりませんように」


 夏樹は27歳。

 とても優しい。

 唯とは同じマンションの二軒隣だ。

 二人とも子供を産んだら、良いママ友になるだろうとお互いに思っていた。


 

***

 


 「3964kgの元気な赤ちゃんです」


 唯の赤ちゃんはちょうど10カ月で産まれた。

 男の子なので、れんと名付けた。

 唯はたくさん汗をかいて、毛穴が全部開いたんじゃないかと思うくらいの疲労感だった。

 初産は7日間で退院する。まだ体力は回復していない。


 アジア人の9割がマタニティーブルーになるとも言われており、唯も退院前からもれなく涙が止まらなくなったりしたが、数日後に落ち着いた。


 退院後は義母に1カ月間お手伝いに来てもらった。

 赤ちゃんのお世話は唯。

 義母は昼間は赤ちゃんのお世話と家事をした。


 体力がついてきてかなり妊娠前に戻ったところで、産科の1カ月健診がある。

 特に問題はなかった。

 性交も許可された。



 

***



 夏樹は妊娠5カ月に入った。

 唯の赤ちゃんも3カ月になった。


 唯のスマホのSMSにメッセージが送られてきた。


 『唯さんの赤ちゃんが見たいです』


 『良いですよ。家でも良いですか?』


 『ケーキ買って行きますね』


 唯はリビングでハーブティーを入れ、お皿とフォークを用意した。

 

 「どうぞ」


 声が被る。


 夏樹がハーブティーを飲もうとした時、唯の赤ちゃんがおぎゃあおぎゃあと泣き始めた。

 唯はブラウスのボタンを外し、胸を露出させた。そして赤ちゃんの顔に乳房を含ませると、泣くのは落ち着いた。


 ゴクリ、と夏樹は息をのんだ。

 この動作はぐっと胸を締め付けるようなものがある。美しい。

 夏樹も同じ事をする未来があるわけだが、ここまで色気を放ち美しくなれるだろうか?



 

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