多神教国家と一神教国家の大きな違い 古代インドの『リグ=ヴェーダ』 CLAMPの『聖伝』とシェンキーヴィッチの『クォ・ヴァディス』

「紀元前1500年頃、牧畜民のアーリヤ人が先住民を征服してパンジャーブ地方に定住。彼らは火や雷などの自然を神として崇拝し、その賛歌集が『リグ=ヴェーダ』だ」


 古代インド史、ヴェーダ時代の授業で、そう世界史の先生が説明したとき、私は勝手に嬉しくなった。


 当時、私はCLAMP先生(4人グループの漫画家精鋭集団)の『聖伝-RG VEDA-』(せいでん リグ・ヴェーダ)にハマっていたのだ。


 古代インドの神話世界がベースの漫画で、いろんな神様が登場しまくり、とにかく絵が美しかった(史実と関係ないですが)。


 インドは自然を神様にするが、日本も太陽を天照大神、桜の木を木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)としたり、自然崇拝の多神教国家である。


 世界の歴史を見ていくと、多神教国家と一神教国家には大きな違いがある。


 それは宗教戦争の数である。


 日本やインドのように、八百万の神な国は、たくさんの神様ウェルカム!! なので、わりと他の宗教に対しても寛容な傾向があり、新しい宗教が入ってきても拒絶せずに良いとこどりというか、融合する傾向がある。


 日本の八幡信仰とか、仏教と神道、どっちやねん!? って感じである。


 正月に神社に初詣に行き(神道)、夏に寺や墓に先祖供養に行き(仏教)、クリスマスを祝う(キリスト教)。


 日本人は節操なしと言えば、節操なしだが、このゆるゆる感が私は好きだ。


 江戸時代、キリシタンが処罰されたのは、宗教的というよりも「徳川幕府の将軍様よりもイエス=キリストのほうがエライ!」って思考の農民が増えると反乱が起こりがちで都合が悪いので、「上の者を敬え」的な道徳論を展開する儒教を推進したと言われている。


 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のように一つの神が絶対だと信じる民族は、他の神を信じる者に対して厳しめの目線でみるので、非常に宗教絡みの戦争が多いと言うか、西洋の歴史はほぼ宗教絡みの戦争。


 個人的には「あなたの信じる神もいいし、私の信じる神もいい」という平和主義な日本の風土が私は大好きだが、昔シェンキーヴィッチの歴史小説の名作『クォ・ヴァディス』(迫害を受けていたキリスト教徒たちが世界にキリスト教を広めていく物語)を読んだとき、異端とされたキリスト教がなぜ世界一信者の多い宗教になりえたのか、その片鱗を見た気がした。

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