ロスト仙台インターネットエクスプローラーズ
@ienikaeru
第1話 退屈な授業を抜出して、私は検索師に会いに行く
Scene1
どこまでも澄み渡る青空の下。
とはいっても私からは天井の落ちた一部分から見えるだけだ。
昼下がり。私は教室で歴史の授業を受けている。退屈でもちろん眠い。
椅子の背に体を預けて首を楽な角度まで傾けると、歪に空いた天井の穴からちょうど空が見える。
今授業を受けているのは3階建ての雑居ビルの3階。元々はカフェという軽食を提供する場所だったらしいが、特別な手入れをするものがいないため蔦が生えるに任せられている。
壁一面の大きな窓から見下ろすアスファルトも同じように、ところどころからひび割れが生じ、草が生い茂っている。
この辺りも十数年前は割と大きな地方都市ってやつだったらしい。始まりの日以降に生まれた私には都市というのがどのようなものかいまいち想像がつかないが、夜でも明かりが絶えず 昼間のようで、人が絶えず往来していたというのを聞いたことがある。
「で、だいたい10年ちょっと前くらいかな? 人類は精神的に悪影響が大きいいくつかの文化を放棄し……」
白い髭を伸ばした中年の男性が退屈そうに本の内容を朗読している。
こんな歴史の授業は意味がない。だって始まりの日以降、つまり旧暦終了後の新暦は元年で止まってる。もう年号を数えてないんだから正確な時も一部の人間にしかわからない。
一部の人間。それは検索師と呼ばれている特別な知識人だ。
失われた技術、人類の叡智の閲覧を認められた者たち。仮想空間のインターネットに繋ぐためのデバイスってやつを起動させると、それに付随して現在の正確な時が表示されるらしい。
まあ検索師にとって時がわかるなんてことはおまけに過ぎない。検索師の真の冥利とは旧時代の叡智に触れられること……。
「……アオイ君、アオイ君。ずっと君は天井を見上げて」
「教育がほとんどなくなって、面倒なのに先生が好意で私に歴史を教えてくれてるのは知ってるけどさー。先生」
体を机から起こし、椅子から立ち上がって私は続ける。
「私この話はもう知ってるんだ! 検索師のおねーさんに習った。外出てくるから今日は授業は終了で!」
「あ! ちょっと! ……全く。暗くなると野生の動物が出て危ないですから早めに帰ってくるんですよ!」
「はーい!」
諦めたように、窘めてくる先生の言葉を背に受け、私は外に出るため教室の階段を駆け下りたのだった。
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