〈陽菜乃視点〉






ハルト「・・・・ヒナ… 」






彼が言葉を発したのは抱きしめてから

しばらく経ってからだった…

時計を見てないから正確な時間は分からないけれど

30分は経っていたと思う…





私は返事の変わりに彼の背中に腕を回して

軽く背中をトントンとあやす様に叩いた








ハルト「・・・・お願いきいてくれる?」



 



「・・・・なに… 」






ハルト「この…残りの週末は全部俺にちょうだい…」







彼の言葉に目を閉じて

瞼の裏が熱くなっていくのを感じた…






水曜日に電話で話した彼はいつも通りで

無邪気な笑い声で話していた

きっと彼の中で木曜日に私との事を考えたんだろう…






ズルズル、ダラダラと

続くわけにはいかない私達の関係は

どこかで終わりにしなくてはいけない…






( そして、それは約束の3ヶ月間だ… )






 


「・・・ん…・・分かった… 」







ハルト「・・・・ふふ…今日は素直だね…」







いつもの様に生意気なセリフを言う彼の

声は鼻声でヤッパリ泣いているんだと思った






「・・・・ハル… 」


 


 


ハルト「・・・・もう一つ… 」






「・・・・え…?」


 




ハルト「・・・・最後のワガママ言ってもいい?」







彼は時折り鼻を啜りながら

私に最後のワガママを話だした…





 


「・・・・いいよ…」






ハルト「・・・・約束だよ?笑」






「・・うん… 約束ね… 」


 




ハルト「・・・今日はヒナが優し過ぎて怖いな?笑」






「はーちゃんが悪い事しなかったら優しいわよ…笑」






ハルト「・・・・そうかな?笑」







彼はずっと私の頭を撫でながら話していて

最後まで彼の顔を見る事は出来なかったけれど

眠りにつくまで彼の鼻を啜る音は聞こえていた…







9月1日のあの朝…

彼から「責任とってよ」と言われた時は

早く終わってほしいと思っていた3ヶ月間…

まさかこんな風に彼の胸で必死に涙を堪えてる

自分がいるなんて全く想像していなかった…







残りの1ヶ月間は笑って楽しい思い出で

終わりたいからお互い泣くのは今日が最後だ…

目が覚めたらいつもの様に

彼は生意気なウサギに戻り

私も口煩いお姉さんに戻る…



 



目が覚めたら…

私と彼の最後の1ヶ月が始まるんだ…



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