何故だろう、この方の作品には思わず目を留めてしまうものがある。気負いもなければ、余計な雑念もなく、この方の描く作品には「等身大」がある。それも一等上等な等身大が。この作品もそうでした。最後の最後に目を見張りましたが、読後に残るものは何故だか嫌な気のようなものではなく、何とも言い知れぬもの。何度も読み返してみたくなり、そのうちさまざまな思いにすっかり取り囲まれた末に、思わず「面白いなぁ」と情感たっぷりに呟いてしまう、そのような作品です。