第5話 ― ステータス来ました
手鏡の中に写る俺は、どこからどう見ても女だった。うん、女だ。間違いなく女だ。見まごうことなく女だ(しつこい)。駄目押しで言うなら女『の子』だ。
思い返してみると、ミームと話した時、自分の声色に違和感があったのだが、まさか性別が変わっているとは。転生の時に、性別はいらないって言っちゃったしな。だからと言ってわざわざ女にしなくてもいいんじゃないか?
あ、そういえばっきミームと話した時、『俺』って言っちゃってたか!? ヤバいな、変に思われたかもな……。
(どうやら無事に転生できたみたいね、よかったよかった)
「っ!」
いきなり頭に声が響いた。この声は聞き覚えがあるな……。
「……神、か?」
(そうそう、いかにもワタシがキミの神ですぅ)
「ずいぶんとフランクな言い回しだな」
まるで友達に軽口を叩くようなこの言い草。というかキミの神ってなんだそれ。俺こいつのこと崇め奉った記憶ないんだが。転生した記憶はあるけど。
そして神は俺の眼前にスッとその身を顕現する。おぉ、なんか神っぽいじゃないか。
「まぁまぁいいじゃない、もう友達みたいなものでしょ?」
「いやいや、友達ではないだろ」
「ちょっと寂しいなぁそう言われると。まぁいいけどっ!」
「ったく……。それはそうと、俺、なんで女の子になってるんだよ?」
「え〜っ? どうせ転生するんだから可愛い女の子の方がいいかなって」
「確かに可愛いけど、それだったら最初に言ってくれたらよくないか?」
「だって最初に言っちゃうとサプライズにならないじゃない?」
なんだよサプライズって。頼んでないんだけど。俺にも心の準備ってものが必要なんだよと言ってやりたいところだが、話したいことは山盛りなので、ここらで切り替えていこうか。
「で、なにか用か?」
「そうそうそれそれ。今キミのいるこの家、これもワタシからのプレゼントだから遠慮なく使ってねー」
「あー、転生前に言ってたサービスってやつか。パッと見た限りでは一通りのものは揃ってるっぽいし、感謝しておくよ」
「でしょでしょ〜? この世界での一人暮らしの平均的な家にしたつもりだから、怪しまれないと思うわよー? しかもキミ好みにもしてあるし」
俺こいつに好みとか言った記憶もないのだが、頭の中でも覗かれたか? でもまぁこの状況は実にありがたいと思った。前世で色々と異世界転生モノを読んでいた俺としては、これはかなり温いスタートなんじゃないか? 荒野に一人きりとか赤ちゃんからやり直しとか、そんな過酷な状態じゃなかったのは正直助かる。
というか怪しまれないって。もともと『この世界の住人』として転生してるはずなのだから、怪しいもなにもないだろう。という突っ込みはさて置き。
「これからこの世界のこと、いろいろ調べてみるよ。その方がいいよな?」
「うんうん、それがいいと思うわ。でね?」
「なんだ?」
次に言った神のこの一言が、俺のテンションを二段階ほど上げた。
「この世界にはね、ステータスっていうのがあって――」
おっとキタキタそれそれ! 如何にも異世界転生モノじゃないか。もしかして俺世界救っちゃったりするの? ハーレム作っちゃったりできるの?
いや、待て待て俺。ここはまだ慌てる時間じゃないぞ。BE COOL。というか俺女だから逆ハーレムか。いや、どうでもいいなそれは。あ、いやいやどうでもよくない。『中身男』なんだからBLじゃないのか? うわあぁぁぁぁ……。
「ス、ステータスか。よくあるやつだな」
バシュン! と上がった複雑なテンションを隠すように冷静に答える俺。ただおそらく顔はニヤけてるに違いない。だけど決してBLヒャッホーイじゃないからな、そこは強く言っておきたい。あくまでステータスにバシュン! だから。
おかしなテンションの俺を、心なしか神はジト目で見ている気がする。いや気のせいだな。そうしとこう。見なかったことにしよう。だから見ないで。
「でね、そのステータスを見るには、左右どちらかのこめかみを指で叩くの」
「こうか?」
言われるがまま、人差し指で左のこめかみを軽くトントンと叩いてみると……。
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