第1話 ― アンタ誰?
「・・・ちは」
「・・にちは」
「……」
「こ・ん・に・ち・は!」
「!!!!!!」
俺を起こすのは誰だ? 独身の俺の家には俺以外いるはずもないし、一応親には合鍵を渡してはあるが、来る際には必ず知らせろと言ってある。そもそも実家は俺の家からかなり遠方にあるからこんな時間に来るわけもない。
というか今何時だ? そう思って枕元に置いたスマホを……って、あれ? スマホがないぞ。慌てて時間確認のため部屋の時計を探すと、あたりの
頭をブルブルと左右に振って、無理やり眠気を振り払うと、そこには何もなかった。使い込んだ仕事用のデスクも本棚も、PCも何もかもない。さらに言えば寝ていたはずのベッドすらないし、壁もドアもない。ならばここは『白い部屋』と言えばいいのか。いや、そもそも壁もない白い空間だから部屋と定義づけるのもおかしな話だ。ただ無限に広がる終わりのない白、としか言いようがなかった。
(これは夢か? 夢なんだよな?)
「やっと起きたわね」
「……? アンタ誰?」
「うーん……そうねぇ、キミの世界の言葉で言うと『神』なのかしら?」
ぼんやりと光る真っ白なドレスを纏った人? のようなものが柔らかな聴き心地のいい声で応えた。
(……え? 今なんて言った? というか夢なんだよなコレ?)
「神?」
「そう、神でいいわ。その方が話も早いかな」
夢にしては随分と……と思うが早いか、
「あ、言っておくけどこれは夢じゃないからね」
「はぁ……」
神と名乗ったそいつはどうやら女性らしく、よく見ると体型も如何にもな女性体型で、下世話な表現ではあるけどボン・キュッ・ボンだ。
徐々に目が慣れてくると神の存在が少し具体的に見えてくる。
優雅に纏う真っ白なロングドレスもよく見ると細やかな刺繍が施されていて、神であることを納得させられる荘厳なデザインだ。ただ、ちょっと胸元が開きすぎなのでは?
「はぁ……って何よ、どう考えても夢じゃないでしょ? こんな失明するほど綺麗で荘厳で云々――」
あ、これ早口でまくし立てて聞くのも面倒くさくなるやつだ。
俺は両手をバタバタさせながらそれを遮るように言う。
「あぁはいはいわかったわかった、夢じゃないんだろ、納得はできないが。ところでなんで神様なんかが俺のところに?」
「えっとねぇ、言いづらいことなんだけどね……キミ、死んだのよ」
……いやいやいや何言ってるのこの人、っていうか神? 神の人? 人じゃないよなこいつ。
寝起きの頭にはなにがなんだか全くわからない。目の前に起きている事象にまるで理解が追いついていない。
……というか、死んだ!? 死んだって言ったよな今!?
臆面もなく神と名乗る怪しさマックスのボン・キュッ・ボンが、寝起きの俺にとんでもない情報ぶっ込んできやがった!
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