幽玄の愛

@ngmrn17_svn

温もり

「多分私が求めているのは愛じゃなくて温もりなんだよ。」

僕は君の発言に目を見開く。

人間は生まれた時から己の欲望に執着し、愛に飢えている。

人間ってそういう生き物だろう。

その虚しさに苦痛を覚える生き物だろう。

素っ頓狂な顔をした僕を笑って君は続ける。

「愛は有限だから。」

「でも僕は君が好きだよ。」

「そういうことじゃないの。君はまだ私を知らない。いつ壊れるか分からない愛なんて要らない。」

「じゃあ君の言う温もりって一体何者なんだ。」

「生きてるってことだよ。私は温もりを感じられる。死ぬまでは生きてるってことだよ。」

「そうか。じゃあ僕は死ぬまで生きてる。君の隣で温もりを提供するよ。」

その言葉に彼女は少し哀しそうに笑った。

「君の温もりは私にはちょっとあったかすぎる。」

冷え冷えとした僕の体が泣いた。

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