86日目

天使の右腕を噛み付き思い切り歯を立てた生き物の頬を、別の天使の腕が殴りつけてくる。

生れて始めて他の生物に暴力を振るってしまった。

生き物は震えながら腕を解放すると、噛まれた天使は「すまなかった」と謝り、仲間の天使を殴打した。


「こいつは仲間を助けようとしただけだ。馬鹿者め」

「す、すみません」


噛まれた天使に頭を下げる若い天使は、生き物を強く睨みつけ、猫の小屋を蹴った。

「ギャッ」という小さな悲鳴が聞こえる。


「馬鹿者!」


天使の怒号を受けて、若い天使は拗ねたように飛び上がっていった。


「何故貴様たちが仲間なのかは分からないが、互いに思いあっていることは分かった」


天使は、生き物の麻縄を外し、猫の小屋を地上に下ろした。ドラゴンの布を外し、自分の噛まれた腕を見て微笑む。


「突然すまなかった」


天使は生き物の耳の間の毛をわしゃわしゃと撫でた。腕を気にする生き物を制して、「少し話を聞いていきなさい」と語り始めた。

天使に敵意剥き出しの猫を懐にしまって、生き物は長い耳をぴくぴくと動かしていた。

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