87日目

天使は、人間や魔物がいかに愚かかを生き物に説いた。

しかし、生き物の記憶の中には人間がいない。

魔物もあの洞窟の化け物しか知らない。

首を傾げる生き物に「君は本当にどこから来たんだい」と天使は笑った。

天使の色白で細い指が生き物の毛皮をもしゃもしゃと遠慮なく触っていく。


生き物は身振り手振りで谷の底からやってきたことを天使に伝える。

天使は話の半分も分かっていない様子だったが、「そこは美しい所かい?」と問うた。

天界なんてもっと美しいだろうに。

生き物の記憶の中の天界は人間の創作物だったが、美しい神殿が鎮座していた。


「なぁ、私も連れて行ってくれないか?」

「にゃう」

生き物の懐から顔を出した猫が怪訝そうに声を上げた。

「大丈夫、君たちを悪いようにしたくないだけだよ」

天使は四枚の羽根で生き物と猫、ドラゴンを包み込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る