46日目

ガサガサと足元の長い草を蹴り上げながら、生き物はずんずんと谷の底を歩いて行く。

長い毛にくっ付き虫を沢山つけながら辿り着いたのは、いつもの湖畔とは違う、もう少し薄暗い沼地だった。

沼地に潜む動物たちがじっと生き物を見ているのを感じながら、ゆっくりと足を進める。

トロリとしたエメラルドグリーンの液体を小瓶に詰めて、生き物は来た道を引き返すことにした様子だった。


この谷には所謂回復スポットがあり、今のはその一つだ。

温泉のように浸かれば全身の傷を癒すことができる。生き物はそれを小瓶に詰めて小屋に備蓄していた。


何かあった時の為に。


しかし、先日の大騒ぎで、この水を詰めていた瓶が何本か割れてしまったので、補給に来たのだ。

脚にたくさん張り付くくっ付き虫に苛立っているのか、生き物のこめかみがぴくぴくと動いている。

今日はゆっくりお風呂に入ろう。

そう決めて生き物は、帰り道を急いだ。

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