44日目

一日で部屋を片付けた生き物は、ぐったりとベッドに転がっていた。

体が痛い。長時間丸まった態勢をとっていたせいだろう。背中が悲鳴を上げている。

無理をし過ぎたなとぼんやり天井を眺めていると、窓から差し込む光が天井を彩っていることに気づいた。

七色の光が代わる代わる天井に差し込んでいる。

谷の底の鉱石に反射した光があらゆる方向から差し込むためこういう現状を起こしている。


生き物はきしむ体をゆっくり起こしてベッド際の本を取り出した。

ハードカバーの古ぼけた本は、空に浮かぶカーテンの事を古い文字で伝えていた。

寒い地方で決まった条件下でしか発生しないというその美しいカーテンは夜空を彩るのだという。

生き物は目を細めてその情景を思い浮かべていた。

軽やかなカーテンはきっと薄い膜の様なのだろう。

空高くに突如現れるという光のカーテンを思い浮かべると、生き物は背中の痛みなど忘れられると思った。


いつか必ずこの目で見るのだ。伸ばした手は空気を掴んだ。

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