42日目

すっかり熱の下がったらしい生き物は、ベッドからゆっくり起き上がった。

ぐーっと伸ばした体をゆっくりと丸めてストレッチすると、散らかり放題の床に足を下ろした。


割れたままになっているガラス瓶を丁寧に片付けながら、窓際で丸まっている猫の背中をひと撫でした。

「にゃう」と不平を零し、尻尾をビタンと壁に叩きつけた猫の横を素通りして、拾い終わった割れたガラスをごみ箱に捨てる。

散らかった荷物を整理していく生き物の前を、邪魔することなど厭わず堂々と横切る猫を、不安そうな目でドアの隙間から顔を覗かせて子ドラゴンが小さく鳴いた。


ピリピリした空気が流れるが、生き物の方が降参したらしい。


ふうっと小さく息をついて手を挙げた。生き物の膝に載った猫が満足そうに鼻を鳴らす。

介護してやった褒美をよこせ、というところなのだろう。

ゆっくりと背中を撫でてやると、手足を伸ばしてびにょーんと猫は膝の上で餅のように伸びた。

猫の体の中には液体が詰まっているのかも知れない。

不可思議な形に伸びる体を不思議に思いながら背を撫でる生き物と、猫を大きな目が交互に見つめ子ドラゴンが「ギャア」と鳴く。

介護したのは自分も同じだぞ!ということなのだろう。

仕方なく、猫を持ち上げて小屋の外に出ると芝生の上に膝をつき、右手で猫を左手で子ドラゴンを撫でた。


ゆっくりと傾いていく日差しを感じながら家を片付けるのは、まだ暫くかかりそうだと生き物は思った。

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