第330話 挑もう、【召喚士のダンジョン】
世界救済系のダンジョンというのは、ほとんどない。
考えてみて欲しい。
もしあなたがダンジョンを作る立場であったとして、『魔王を倒すことでクリアとなる世界救済系のダンジョンを作れるか?』と聞くと、作れるとしても面倒だと思うだろう。
なにせ、魔王を倒してクリアとなるような世界救済系には、歴史が必要だ。
虐げられている人達、壊された者達、現在進行形にて魔王が信仰している証。
そういった、"現在進行形にて魔王が進行している様子"という歴史を、見せつけなければならない。
さて、それとは別に、普通のダンジョンの場合。
ただだだっ広い地域を作って、その上で魔物を放って、最奥に強力なモンスターを作ったら完成。
----どちらが作るのが楽か、答えは簡単だろう。
ダンジョンを何者が作っているのかという話をするつもりはないが、何者かが作っていると仮定した場合、明らかに魔王を出現させない方が楽だろう。歴史がない方が作りやすいだろう。
そして、最も重要なのは、世界救済系のダンジョンは、誰かがクリアすると、そのダンジョンは消滅----もとい攻略済みとなってしまう。
どうしてそういう仕様になっているのかは分からないが、そうなっているのだから仕方がない。
という訳で、世界救済系のダンジョンは元々の数が少ないゆえに、一度攻略されるとクリア済みとなって消滅してしまう。
聞いた話によれば、攻略すれば【救済者】という称号を手に入れることが出来るらしいのだが、狙って得られるような称号ではないというのが現実だ。
でも【救済者】----世界を救ったという証こそ、今の俺達が求めている称号と言えよう。
なにせそれをクリアすれば、俺はレベルⅨの【召喚士】になれるのだから。
ココアの提案は最初こそ冗談みたいに思ってしまったが、実際にやる価値ありと、俺はそう結論付けた。
そうとなれば、次はそのダンジョンの選定だ。
言った通り、世界救済系のダンジョンは数が少ない。残っているのは、新しく生まれてまだ誰も攻略していないか、あるいは難しすぎて誰もクリアできていない2つだけ。
一応、ダンジョンを消滅させることが出来るのだから、既存のダンジョンを世界救済系のダンジョンに変えることが出来ないかと、ファイントに提案した。
「マスターは、鳥の卵を鶏に出来るからといって、鶏を卵に戻してペンギンに出来るんですか?」
「うん、無理だな」
「えぇ、レベルⅨなら出来たでしょうけどね☆」
----いや、出来るんかい!
とはいえ、ファイントが出来るのは、レベルⅨから----つまり現在は出来ないという事なので、大人しくダンジョン探しをするしかない。
しかも、ほぼネットは使えない。
スカレットの支配下にあるいまの世界では、ネットの監視とかも普通に行われていると言っても良い。
そんな状況下で、世界救済系のダンジョンを探すというのがどれだけ難しいかというのは、言うまでもない。
という訳で、俺は以前から知る、有名なダンジョンに向かうしかなかった。
そのダンジョンの名は、【召喚士のダンジョン】。
入る度に、レベルがⅠにまで戻されるギミックタイプのダンジョン。
そして、"【召喚士】がハズレ職業と呼ばれるようになった所以"とも言えるダンジョンである。
(※)【召喚士のダンジョン】
世界救済系のダンジョンの1つ。クリア条件は、魔王アレイスターを倒して世界を平和にする事
魔王アレイスターがいる神秘の城に行くには、四天王が管理する4つの塔を攻略しなければならないのだが、『入る度に構造が変わる』、『レベルが上がるとは言え入る度にレベルⅠからスタートしなければならない』という仕様なため、まともに挑戦する冒険者がおらず、いつしか誰も挑戦しなくなったダンジョン
その仕様から、"旨味がない"といわれてハズレダンジョンと呼ばれるようになり、それと同じくしてダンジョン名にもある【召喚士】が見直された結果、"レベルが上がらないとかダンジョン以下じゃないか"といわれた結果、【召喚士】がハズレ職業といわれる一助にもなったとされている
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