第303話 マルガリータは成長途中(2)
「----せいっ! やぁっ!!」
マルゲリータが、ドラゴンの力を宿した杖を振るう。
「あぁん♡ そこぉ♡♡」
振るわれた先であるヘミングウェイは、それに対し悶え苦しむ。
一見すると、ただの変態的なプレイにしか見えない光景ではあるが、一応ながらこれはヘミングウェイを救うという救援行為なのだ。
「(とは言え、状況はそんなのん気に静観しても居られんが)」
俺はそう思いつつ、身体を大きく揺らしていた。
何故、揺らしているかと言えば、この戦闘地域が極寒になっているからだ。
「(恐らく、ヘミングウェイの、あの恐竜の腕の能力だろう)」
俺の感覚からして、ヘミングウェイが悶えると共に、この空間全体の温度がどんどん下がっている。
今の温度は、体感からして-50度……後衛の【召喚士】とはいえ、低レベルだったら身体が凍って死んでいた所だろう。
それでも、ヘミングウェイは気温をどんどん下げ続け、この調子だと絶対零度、つまりは-273度を迎えるのも時間の問題だろう。
ただ悶えているだけでなく、それだけで人を殺す極寒の世界を作り出す----これが、いまのヘミングウェイの戦い方なのだろう。
「うおっ……?!」
----ガクッ!?
身体を揺らして体温を確保していた俺なのだが、急に足に力が入らなくなった。
極寒のせい、いいや違う----。
===== ===== =====
進化途中の 【悪癖龍マルガリータ】のスキル 【
冴島渉の脚の筋力を 【赤子の筋肉】にまで下げ 固定します
【
王の寵愛を独占するため、奴隷から成り上がり理を歪めた悪女を模したスキル。全ての
男の愛を独占するためには、自らが居ないといけない。そう思わせる事が大事である。そのためには自らが居ないと生きていけないくらいにまで弱体化させるのは当然といえば当然である
===== ===== =====
----そう、これはマルガリータの
ロクセラーナ……確か、かつてあったオスマン帝国の王様であるスレイマン1世を、その美貌で篭絡した魔性の女。
元々は奴隷の立場であった彼女はその美貌により、スレイマン1世の目に留まり、彼の寵愛を独占するために国の
スキルとなった【
今は部分的なスキル発動に留まっているが、これがきちんとした形で発動していたら、世界中----彼女のスキルが届く範囲内----であれば、男の筋力を赤子くらいにまで減少させる。
俺だけでなく、男として生まれただけで、とても非力な存在になってしまう。
そうなっては、俺の負け。
俺はもう二度と、自分の脚で歩く事すら出来ない要介護人となってしまうだろう。
「(常時発動強制発動のスキル……状況に応じ、止める事が出来るようなモノでもないだろう)」
今のうちに、進化が完了する前になんとかしなければ、マズいだろう。
そして今、出来るとしたらこの瞬間だけだ。
「そのためにも、使うべきだろう」
===== ===== =====
【《妖狐神》吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング】を 【化身召喚】によって生み出した レベルⅦ相当の 【化身召喚獣】と 断定
【召喚士】冴島渉の レベルを Ⅶへと 上昇させます
スキル【化身召喚】を 獲得しました
===== ===== =====
この新たなスキル、【化身召喚】を。
「行くぞ、【化身召喚】!!」
そうして俺は、俺自身を媒介にして、【化身召喚】を行う。
----そして、この世界から【召喚士】は俺だけとなったのだった。
(※)【化身召喚】
自らに
効果時間は神様の相性や気分によって大幅に変わり、融合された神が了承する限りは効果が持続し続ける
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます