第9章『失楽園のツクり方/冒険者サエジマ・ワタルの章』
第299話 逃げられない相手との再会
「----怖かったら、逃げても良いんですよ?」
振袖を着た獣耳美女は、不敵な笑みを浮かべながら、ココアにそう告げる。
「そうなったら、お主の天下じゃろう。【正月のファイント】よ」
その美女に対し、ココアはそう返す。
----【正月のファイント】。
かつて冴島渉が召喚した、もう1体のファイントであり、厄介なスキルを持つ召喚獣。
そのスキルの名前は、【
相手が敗走すると、相手の強さに応じて新たなスキルを得るという、スキル。
「(今の妾が逃げた場合、あやつにどれだけの"すきる"が渡るか分からぬ。逃げる事は、いや今のあ奴なら避ける事すら"たーげっと"になってしまうじゃろう)」
神としての力を得たココア、そんな今のココアが万が一にでも【敗走蛙】のスキルの対象になってしまえば、どれだけのスキルを得るか分かったモノではない。
厄介なスキルを持つ、厄介な
----だが、しかし。
「お主の事を知っておる妾相手に、お主1人で向かって来るとは思えんのう」
----逃げると新たなスキルを得て、
しかし、逆に言えば、逃げずに真っ向から向き合えば良いというだけの事。
既に知っているならば、逃げなければ良いだけなので、それほど強敵ではない。
故に、だからこそ、ココアは疑っているのだ。
----自分のスキルの弱点を知る相手に対し、1人で向かって来るはずがない、と。
「神となっても油断や慢心はないと。後輩ちゃん的には、神ってのは傲慢と偏見に満ちたヤツで、倒しやすいと思って来たんですがね」
「悪いのう。生憎、神になったばかりの初心者で、そのような慢心がまだなくて」
その間にも、ココアは神としての力を使い、周囲の状況を未来視で確認する。
----5秒後、背後から銃弾が撃たれる、という未来を"
ココアの選択によって、不確定な未来は軒並み消え去り、『背後から銃弾が撃たれる』という未来だけが確定される。
「(どこから来るか分からないのは驚異じゃが、場所と"たいみんぐ"が限定されとるなら、容易に対処できる)」
そして、相手が銃を放った瞬間、ココアは間髪入れずに攻撃を放つ。
「----深淵魔法【天罰】」
その深淵魔法は、自分に攻撃を放った者に対して、もっとも効果を発揮する彼女のオリジナル魔法。
銃弾はココアに当たったと共に、銃弾を放った者に対して天罰が下される。
『ウグワーッ!!』
ガタッと、物陰から1人の青年が現れて、そのまま倒れた。
「うわぁお! 後輩ちゃんも、驚きすぎちゃいましたよ!
その人、歴史上でも名高い
「今のが、あなたの"じょーかー"、切り札なのかえ?」
ココアが神でなければ、今の攻撃でココアはやられただろう。
逆に言えば、神であったからこそ防げた攻撃である。
「妾が神である事は、分かっておったであろうに? あの程度の"
「あらら? バレちゃいましたかね?」
テヘッと、悪びれずにそういう正月のファイント。
「妾は、主と妹達を探しに行かなければならぬのじゃよ。神の知識を使えば簡単なんじゃろうが、生憎とそういう訳にはいかなくてのう」
神の知識を用いれば、ココアはなんであろうと調べることが出来る。
ただし、調べる範囲が広範囲になればなるほど、ココアの脳に対する負担が大きくなる。
今の所、ココアが知りたいそれらの情報は、ココアの脳にかかる負担が大きすぎて調べられなかった。
「だからお主と……そこに居る輩の相手はしておられんのじゃ」
と、ココアは先程倒した
その人物は、悪癖龍マルガリータに良く似た人物であった。
ぶかぶかの白いスーツを着た幼女であり、腕には炎を象った印が描かれていた。
頭には金色に光り輝く輪っかが浮かんでおり、背中にはグルグルと回る歯車が同じく浮かんでいた。
「めちゃくちゃ可愛い【超絶美少女ウルズちゃん】が、やってきましたよ! そこの吸血鬼ちゃんは、この可愛いウルズちゃんがやっつけちゃいますよ!」
……ほんとうに、マルガリータに良く似ているその幼女。
その幼女は、何故だかココアの未来視に、いっさい姿が映し出されない。
「(いま目の前に居るのを見ておるのに、未来視を使うとたった1秒後でも見えなくなってしまう。
----未来視が効かない相手、という事じゃな)」
恐らく、そういうスキルを持っている相手、という事なのだろう。
早く冴島渉と妹達を救いに行こうと思いつつ、【敗走蛙】のせいで倒さなければならない。
ココアは妹達の元に向かうため、彼女達と戦う事にしたのであった。
(※)【超絶美少女ウルズちゃん】
なにかあった世界線で、正月のファイントと同様に、冴島渉が召喚した召喚獣。悪癖龍マルガリータと同じ、融合召喚獣
マルガリータと同じく、自分の事が一番可愛いと思っており、それを証明すべく戦うアイドル系幼女
基となった召喚獣は【過去の女神ウルズ】と【殺生石】。女神ウルズの力により、彼女の行動はすべて過去となっており、彼女がつけた傷は『治らなかった古傷』となり、治療困難な代物となる
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